ブロックチェーン特集:対談 Vol.03『インターネットのインフラを支える、 さくらインターネットにおけるブロックチェーン、先端技術への取り組み』
【前編】ブロックチェーンなど革新的な技術、未来のイノベーションにつなげるために重要なポイント
田中邦裕氏 × 平野 洋一郎

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏 × インフォテリアCEO平野

2016年1月に発表をおこなった、さくらインターネット、テックビューロ、インフォテリアの三社による事業提携より四か月あまり。現在、何を考え、どのようなアクションを試みているのか、さくらインターネット、インフォテリアの代表二名が対談でより掘り下げた内容について4回の記事に分け、明らかにしていきます。ブロックチェーンの事業提携の話にはじまり、IoT、そしてその先まで、話題は多岐に渡りました。第1回目となる今回はブロックチェーンに関する事業提携の話からブロックチェーンに取り組むきっかけ、そしてそれらを踏まえたプロダクト開発の在り方などについてお伝えしていきます。

未来のイノベーションを育むための実験場を我々は提供している

-平野 2016年1月に発表した、さくらインターネット、テックビューロ、インフォテリアの3社による事業提携日本でのブロックチェーン利用促進を図るためにプラットフォームを提供する、という取り組みを現在、私たちは一緒に進めています。さくらインターネットはなぜブロックチェーンに着目し、このような取り組みをおこなう判断をしたのでしょうか?

-田中氏 私は、ブロックチェーンというのはやはり破壊的なイノベーションを起こす可能性を秘めた技術だと感じています。少し技術的な話になりますが、今までのリレーショナルデータベースとは全く異なる概念ですし、分散処理の考えもこれまでのものとは大きく異なります。まさしく斬新なアーキテクチャです。もちろん、ブロックチェーンにも弱いところはありますが、だからこそチャンスもあるというように前向きに捉えています。

-平野 確かに、私も以前、財部誠一氏との対談で「革命的な技術」という言い方をしましたが、ブロックチェーンはイノベーションたり得る技術だと考えています。

だからこそ、インフォテリアでも積極的に取り組んでいるわけですが、この実証実験の取り組みを運用している中での発見などありますか?

さくらインターネット 田中氏

-田中氏 正直なところを挙げると、まだこのブロックチェーンという技術が黎明期である、というのは運用からの報告などを聞いて実感しています。まだ「まず触ってみる」という段階のため、具体的なアウトプットというよりもまさに「実験」なのだと思います。

-平野 こういう注目度が高い技術は盛り上がっているときは「万能的」な扱いを受けますが、実際の利用を通じて、適したところと適さないところや良し悪しの判断ができるようになります。しかし、近視眼的な判断をするのではなく、じっくりと実験の過程を見守る寛容な姿勢が今は必要ですよね。

-田中氏 仰る通り、ブロックチェーンはまだ実験の真っ最中です。机上の空論で妄想するだけなら簡単ですが、しっかりと使ってみた上で、その技術を手段としてどう活用するのかがイノベーションにつながるわけです。いわば単なる技術革新でしかないブロックチェーンという技術を未来のイノベーションとして育む時期であり、我々のプラットフォームはそのための実験場であるので、この取り組みは長い目でも非常に期待をしています。

-平野 ブロックチェーンの運用はいろいろとややこしい面もあるため、サーバの中に組み込まれてPaaS形式で提供していく、というのは利用者にとっても利用障壁を下げることになるように思いますが、そのような考えなどは構想されていますか?

-田中氏 利用者の方の着目点はとてもシンプルで、技術だけでもリソースだけでもありません。「それで何ができるか」ということがポイントです。なので、すでに運用を進める中でノウハウを溜めてきている当社は一歩先んじているという自負があります。また、それぞれの会社でそれぞれが最適化をするよりも効率的ですよね。

また、夢も大きく広がります。先ほど挙げて頂いた、PaaS形式での提供などをはじめ、IoTのバックエンドへの組み込みや、ASTERIA Warpとの連携でさまざまなアプリケーションとの連携も考えられます。広がりがあってとてもワクワクしますね。

 

お客さまの根源的な欲求がどこにあるのか、を追及していく

-平野 おっしゃるとおりですね。「ワクワク」という表現をされましたが、さくらインターネットの取り組みにはそう感じさせるものが多いように私は思っています。世の中でまだニーズがなくてもとりあえず、やってみるというような。これは田中さんの狙いなのでしょうか?

-田中氏 「ニーズとシーズのバランス」はとても重要だと考えています。日本では、技術系の会社だと「シーズ」ばかり。逆にマーケティング系やSIerは「ニーズ」ばかり、という傾向になりがちですが、やはりお客さまの期待に応える、そして期待を超える、という両方のことをバランス良くやっていかなければならないと考えています。

世界的な自動車メーカーを創業したヘンリー・フォードの有名な言葉に「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」というものがあります。お客さまの根源的な欲求がどこにあるのかを追及していくことが大切で、私たちはそういう姿勢でありたいと常々自問しています。

-平野 先のフォードの例えで言うと、馬が一般的な移動手段であった当時のお客さまはまさか「車」なんて解決策があるとは考えもしなかったでしょうね。お客さまのニーズはこれまでの選択肢の中からしか出てこないと思う。だからこそ、私たちサービスの提供側から枠を超えた提案をしていかなければいけませんよね。

インフォテリアで新しい製品を開発する際の大きな特徴に、「お客さまの声を聞かない」ことが挙げられます。営業からのヒアリングもしません。これは決してネガティブな意味合いではなく、進化の激しいデジタルの世界において製品を生み出すためには「今」ではなく、「未来」を見据えなければなりません。だからこそ、社内の開発、企画のスタッフで徹底的に「未来」思考でプロトタイプ化していくのです。

インフォテリアCEO平野

そして幾度かのスクラップ&ビルドを経て製品版のリリースへと漕ぎ着ける。そこではじめて世の中の声を聞き始める。これはASTERIA Warpの場合も同様で、もう一つの主力製品Handbookもこのような経緯で開発されました。

実は、ASTERIA Warpに次ぐ柱のビジネスを模索していた時、コンセプトとして「移動する人やモノ、つまりモバイルへ『つなぐ』を実現する」というところまでは創業時からプランしていました。当時の日本国内において、「モバイル」と言えばi-modeに代表される各キャリアが提供するウェブサービスで、PCとは異なるもの。しかし、果たしてその在り方が本質的なものか、私と副社長の北原で議論を重ねました。

私はもともとエンジニア畑出身ということもあり、ハードウェアを開発側の視点から考察することでソフトウェアの未来が見える、と確信しています。

年々進化するメモリ容量、CPU性能、インターネットの通信速度などを考慮すると、近い未来にビジネス用途の「モバイル」が「i-modeの発展形」のようなソフトウェアが進化したものではなく「ポケットに入るMac」のようなハードウェアが進化したものになると考えました。それがHandbookの原型へ繋がりました。そして、私たちの考えに近しいデバイスはそれから約2年後にAppleから発表されました。ご存知の「iPhone」です。その後、「iPad」が登場することで、ビジネスにおけるモバイル活用がようやく市場で認知されて大きく進展していくことになったのです。

-田中氏 確かに、ムーアの法則でそろそろ限界に近づきつつある、と何年も前から言われながらもそのスピード感で年々進化した結果、コンピュータの性能は劇的に向上していますよね。開発側の視点で見れる人は当時、そういう予測を立てている人が結構いたように思います。しかし、その来たるトレンドについて分かっているはずなのに、敢えて分かっていないフリをする人が相当数いたのではないでしょうか。

i-modeのような当時のトレンドに合わせるほうがサービスの企画・開発における失敗リスクが少ない、という後ろ向きな理由だけです。そういうのを見ていると、本当に成功させたいのではなく「失敗したくない」という感情で判断してしまっているようで、とても残念でなりません。

-平野 このような風潮がイノベーションを阻害している、とも言えるのかもしれませんね。次回は日本の産業界におけるイノベーションについて考えるところから話を進めていければと思います。



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