2017年6月21日

社長は現役の美容師!?ユーザー視点で現場の悩みを解決し、美容業界をテクノロジーで変えるLiMEを徹底取材!

美容師のためのアプリを開発しているLiME株式会社。 テクノロジーの力で、美容師の働き方を改善するだけでなく、美容師と顧客との信頼関係を築くきっかけ作りにもなっているんだそう。それはどういうことなのか、LiMEの秘密に迫りました!


こんにちはin.Live編集部の石川です。

ここ最近、様々な分野でのAI・IoT化が進み、より身近なところでテクノロジーに触れる機会が多くなりましたよね。そんな中、約90%が紙のカルテで顧客情報を管理している美容業界でも、様々な業務が電子化され始めているようです。

今回は、テクノロジーの力で美容師の働き方にも変革を起こしているLiME株式会社に取材に伺いました。こちらで開発されているアプリは、美容師のためのサービスでありながら、美容院の利用者であるわたしたちにもメリットがあるようです。それは一体どういうことなのか?

こちらの2人にお伺いしてみました!


右:古木 数馬 (ふるき・かずま)さん
LiME株式会社 CEO / 美容師

表参道サロンapishに務めた後、代官山サロンへ。その後、横浜で独立開業しプライベートサロンを設立。現在8年目。他、ヘアメイク・美容商材商品開発&技術開発顧問・美容師セミナー講師・高校の美容科通信講師等。 2014年8月26日 LiME株式会社設立。

左:石井 諭 (いしい・さとし)さん
LiME株式会社 COO/CTO補佐

中央大学理工学部卒業。NTTデータに入社し6年間、大規模システムの開発チームに所属。チームマネジメントの傍ら、ITインフラの整備・構築に携わる。エンジニアとしてお客様と直接関わるものづくりをしたいという想いを胸に、LiMEに参画。 2016年2月1日 LiME株式会社に参画。

現役美容師が開発した「LiME」美容師の働く時間が短縮

美容師の方に人気のアプリを開発されてるとお伺いしたのですが、「LiME」では実際にどのようなことができるのでしょうか?
ご存知の通り、美容師は、お客さんが以前染めたカラーやトーン、そのときのカラー剤といった顧客情報を紙のカルテで管理をしているところがほとんどなんです。でも紙のカルテって、量も膨大で整頓場所を間違えて戻すと探すのにも時間がかかるし、なにより美容師がカルテを記入する時間もかかりますよね。

カルテには、施術内容だけでなく、お客様との会話なども書かれており、美容師にとってはとても大切なものなんです。そこで、このカルテをスマホで簡単に入力できたり、クラウド上で管理できるのが「LiME」なんです。

ちょっと見てみますか?

おおおお!写真も一覧になっていて見やすいですね!
そうなんです。電話帳のようにシンプルな画面で見やすいですよね。

ちょっと試しにやってみましょうか。
まずは、お客さんの顔写真を撮りますね。

こんな感じで、カラーはこの色で、トーンはこれ、カラー剤はこれ…(ポチポチ)
… はい!これで完成です!
早い!チェックするだけで、こんなに細かい情報まで入力できるんですね!

(たったの1分でわたしのカルテが完成しました!)


美容院のカラー剤って、ひとつのブランドだけでも100種類くらいあるんですよ。さらに他のブランドのものが何個もあると…もう組み合わせは千近くです!さらに何対何の割合で、何グラムで…なんて、薬の詳細まで覚えるのって、すごい大変ですよね。

これなら1分もかからずに紙よりも圧倒的に早く入力できるので、美容師の働く時間の短縮にもなります。
カラー剤ひとつでもそんなに種類があるんですね!
そう考えると仕事もかなり効率的になりそうですね。それに画面も見やすい!
デザインも美容師が一番使いやすいものにこだわりました。このように、お客さんの名前と顔、日付が一覧になっているので見やすいですよね。

なるほど。美容院では、こうしたWEBサービスを仕事で普段から使われているイメージがあまり無かったのですが、使ってもらいやすくするような工夫もあるんでしょうか?
そうですね、特に美容師に喜ばれているのはこの写真機能ですね。
昔は、カットしたときの髪型も手で書いていたんですが、これなら写真を撮っただけですぐわかりますよね。あとは、この日付も美容師にはとても重要なんです。

何ヶ月前にパーマをかけたのか?前回はいつカラーをしたのか?これらが一瞬でわかるのは非常に便利なんですよ。
美容院の紙のカルテがアプリ化することで、時間の短縮だけでなく、よりお客さんとのコミュニケーションもしやすくなりそうですね。他にはどんな機能があるんですか?
あとは、予約管理ですね。
今は、FacebookやLINEなどSNSからもお客様から予約はいただけるんですが、結局紙の予約表で管理をすると、お店に行かないと予約の確認ができない…といった人も多いんです。

このアプリでは、外にいても予約の管理ができるだけでなく、それぞれのメニューに金額や施術時間も紐づけられているので、これらが自動で予約表に入ります。これによって、今までカルテと予約表と二重で管理していたものがひとつになり、さらにクラウド上で保管されているので、ここですべて完結できます。

もちろん、顧客の個人と特定できる情報は暗号化されているので、安心や安全も保証されています。自分自身が美容師として働いていて、この機能が欲しい!と思うアプリを作っているので、毎回使いながら自分でも感動していますよ(笑)。
…え!社長は今も現役の美容師なのですか?
そうなんです。今は横浜の自宅で、土日に美容師をやっています。
現場の美容師のリアルな声に共感し、アプリ制作に活かせるのではと思っています。

美容業界で当たり前だった不平不満をテクノロジーで変える

そもそも、LiMEを立ち上げるまでのお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。
IT企業の代表と美容師を同時にされている方って初めて聞きました…。
もともと表参道の大きい有名なサロンで働いていたんです。そのあとは、代官山の小さなサロンに移って、店長業務をしていました。そんなある日、「情熱がうっとうしい」という理由で、突然クビになりまして…(笑)。
すごい衝撃的な理由ですね(笑)。

そのときのサロンのオーナーに、もっと大きいサロンに行くか、独立した方がいいと言われたんです。当時24歳くらいでしたが、路頭に迷いました。

そんな人生ドン底の時期に、バイクで屋久島まで旅に出たんです。すると不思議とやる気と元気が出てきて、帰ってきた頃に、友達にカットを頼まれ始めたので、そのまま独立して自宅で美容室をやることにしました。今もそこで美容師をしています。
独立されたことで、今までサロンで働いていた頃とどのような変化がありましたか?
いざ独立したら、いろんな人に出会えるようになりました。サロンで働いていたときよりも、自由な時間が増えたので、美容師のセミナー講師や美容学校の講師をやっていた時期もあります。

いろんな経験をさせていただいているうちに、美容業界での問題を感じることが増え、これらの問題を解決したい!という想いが強くなり、今の会社を立ち上げることにしました。
美容業界に関わる中で感じていた問題というのは、具体的にどんなものなのでしょうか?
業務内容のわりに給料が安いことや労働時間が長いこと、社会保障がちゃんとしていないことなどの問題を肌で感じていました。また美容師になりたてのアシスタントは、練習用にカラー剤などの材料を自分で購入しなければいけないサロンもあるので、給料が入っても手元にはほとんど残らないのが現状なんです。

ただ、この現状って美容業界ではよくあることなんですよね。
はじめは、この問題の原因はお店にあるものだと思っていたんですが、お店を変えたり独立したり様々な経験を経て、問題の根本は、美容業界の構造や環境にあるということに気がついたんです。
具体的にはどういったことでしょうか?
ここでは具体的な内容は話せませんが、構造状の問題でなかなか美容師個人に利益が還元されていない現状が見受けられます。

美容師が頑張って売上を伸ばしても、他方面にお金が流れてしまうことがあるんです。この構造はお客さんと美容師の直接的な繋がりをつくることで大きく変えられるのではないか?というところから、テクノロジーの力で美容師の仕事をサポートするLiME株式会社を立ち上げました。
テクノロジーの力によって、多くの課題解決に取り組めると確信しています。

現役美容師がIT企業社長に!?
アイデアを形にできるエンジニアとの出会いは?

美容師からIT系サービスの立ち上げって、全く異なる分野ですし、ハードルも多くあったのではないかと感じます。このアプリを作ろう!と思ってから、実際に形にするまでのお話をお伺いできますか。
もう、ハードルしかなかったですね(笑)!
一番最初にぶつかったのは鶏と卵問題です。

私たちの事業モデルですと、投資家やファンドから投資を受けて課題解決に挑んでいくのがベストだと考えています。しかし、よほどの優れたアイデアで無い限り、まず初めにはプロダクトが無いと投資が受けられません。プロダクトを作るにはエンジニアが必要です。エンジニアを雇うにはお金が必要になります。そしてお金を投資してもらうには…と、ループになってしまいます。

プレゼンに周りながらも、とにかくエンジニアを探そう!と活動していたものの、全く知識がないのでどんな人がいいのかもわからなくて…。
実際に、どのようにエンジニアの方と出会われたのでしょう?
まずは、色々な人にエンジニアの方を紹介してもらい、直接会いに行きました。それから想いに共感してくれた優秀なエンジニアのmasasさんに創業メンバーとしてジョインしてもらいました。初めは、ほぼひとりのエンジニアに開発をお願いしていた状況だったのですが、さすがにもう一人エンジニアが必要だということになり、それから石井と出会いました。

直接会って想いを伝えて、仲間にしていったんですね。石井さんは、以前はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。
もともとNTTデータという会社で6年間SEを続けていました。大きな会社で安定していましたが、これから先のキャリアを悩んでいた時期にちょうど古木から声が掛かったんです。
当時はサービスを開始して忙しい日々に追われていたので、久しぶりに遊びに行こう!と息抜きに花火大会に誘われたんです。そこではじめて石井を紹介してもらったのですが、第一印象は”チャラそう”の一言でしたね(笑)。

でも、サービスやその背景、今後やりたいことを話したりしているうちに、意気投合してしまい…この人だ!という運命のようなものを感じました。
当時はちょうど、アプリを作り始めて半年くらいの頃だったのですが、実際にアプリを見せてもらったときに衝撃を受けたんです。

前の会社だったらチームを組んで半年くらいかかるようなものを、たった一人のエンジニアが週1回ほどの作業時間で3ヶ月くらいで作ったと聞いて、何度も疑ってしまうくらいびっくりしましたね。想いだけでなく、エンジニアの技術力も素晴らしかったので感動してしまいました。

前職ではメンテナンスや、システムの管理がメインだったので、もし次に転職するならば、技術力が上がるような場所に勤めたい!0から1のものづくりに関わりたい!と考えていた時期でもあったので、これを見てピンと来てしまいましたね。

あとは「IT×美容業界」なんかモテそう…!って思いもあったり…。(一同 笑)
色々な方に共感して頂き、ありがたいことに、現在は12人のチームメンバーに関わってもらっています。

自分たちがユーザーだからこそ、圧倒的な使いやすさに繋がる

大企業からベンチャー企業に変わり、エンジニアとしてどのような変化がありましたか。
IT系企業の人がシステムを作る時って普通は、お客さんのところに行って、提案をしたり、ヒアリングをして、その内容を踏まえて、社内で報告して…。というのを何度も繰り返し行うんです。このように、どんなものがほしいのか、どのようにしたいのかユーザーの意見を聞き出すまでに、とにかく時間がかかるんです。

でもここでは、会社の代表が現役美容師なので、その時間が短縮されることがまず大きな変化ですね。
確かに「会社の代表がユーザー」という環境はなかなかなさそうですよね。
その他、アプリを開発する上でのこだわりはありますか?

圧倒的に使いやすいということを目標として作っているので、そこはブレないようにこだわっています。代表以外にも、知り合いの美容師の方たちが手伝ってくれていたり、サービスを提供するお客さんが常に身近にいるので、意見が吸収しやすい環境なんです。

彼らが、ボタンの配置や文言ひとつにしても、シビアに意見をしてくれます。美容師ではない僕らにはあまり気づかないようなちょっとした体験の違いが、使いやすさにつながっているのではないかと思っています。

テクノロジーが生んだ美容師と顧客との信頼関係

今まで紙だったものがアプリ化する事によって、美容師の働く時間も減ったのでは?といった印象をうけるのですが、実際に美容師からの声や反応はどうでしょうか。
現在は利用者数も増え、実際に利用した美容師からもかなり好評をいただいています。カルテを探したり整理する工程も含めると、おそらく数十倍の時間が削減されたのではないかと思います。
以前から美容師が紙でなにかを書いているんだろうな…というのは、なんとなくわかっていたんですが、現役の美容師たちに1日のタイムスケジュールを聞いてみたら、かなりタイトなスケジュールで驚きました。施術後にカルテを細かく書く時間なんてないですよ!

それに毎回の施術の記録って、そのまま美容院のサービス自体にもつながると思っているんです。自分がお客さんの立場で考えても、「前回と同じ感じで!」と言っても相手に伝わらない状況って嫌ですよね。

このように、テクノロジーによって美容師の働く時間が減り、便利になるだけでなく、それによってその美容師自体の資質が上がると思っています。それって客である僕らも嬉しいですよね。

なるほど、冒頭で話されていた美容業界が根本的に持っていた問題が解決されることで、時間的にも精神的にも余裕が生まれ、最終的にはお客さんへのサービスの質にも影響しそうですよね。
まさにそうです。サービスを提供しているのはユーザー(美容師)ですが、その先のお客さん、つまり、美容師ではない皆さんが最終的に幸せになるサービスを目指したいと思っています。
美容師のためのサービスだけではなく、最終的にわたしたち美容院を利用する側にもメリットがあるということなんですね。

LiMEに取材に行ってきました!まとめ

今回は美容師と顧客をつなぐLiME株式会社にお話をお伺いしました。
一見、美容師ではないわたしたちには関係のなさそうな”美容師のためのアプリ”でしたが、実は巡り巡ってわたしたちにもメリットがあることがわかりました。


最近はテクノロジーの力によって、業務の効率化を図る企業や業界が増えていますが、「LiME」のように、抱えている問題を解決して終わりではなく、その一歩先の信頼関係を築き、今まで以上により深く人と関われるテクノロジーこそが、これから先の未来にも増えるはずだと感じました。

今もなお、進化を続けている「LiME」の今後が楽しみです!最後まで読んでいただきありがとうございました。

《関連リンク》

・LiME http://limehair.jp/
・LiME Inc.http://limehair.jp/corp/

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この記事を書いた人
石川妙子 アステリア株式会社 広報・IR室。in.Live編集部。 大学卒業後、大手銀行にて勤務。その後、自由大学の運営を経て、2015年より世界一周の新婚旅行へ。帰国後は、編集者として活動。インバウンドや農業メディアにも所属。2018年より長野を拠点に移し、東京との二拠点生活中。