2017年7月19日

バーチャルは「偽物」ではなく「本質」?アイデアを具現化するMR専門工房 HoloDive に行ってきた!

2017年5月、渋谷に「HoloDive」というMR専門工房が出来たのをご存知でしょうか?施設を運営する
株式会社SpiralMindの鎌田社長に「HoloDive」を通じて具現化が期待される取り組みについてお話を伺いました。


in.LIVE読者のみなさん、はじめまして。ライターの鈴木しのです。

最近ニュースや新聞でも、VR(Virtual Reality:仮想空間)やMR(Mixed Reality:複合現実)という言葉をよく耳にするようになりましたが、渋谷にMR専門工房である「HoloDive」という施設がオープンしたことをご存知でしょうか?

「HoloDive」は、渋谷キャストに開設されたMR専門工房で、新しいライフスタイルを創出するという目的のもと、さまざまなクリエイターと共に技術革新の支援などを行なっています。

そこで今回は「HoloDive」にお邪魔して、実際に施設を体験しながら、最先端のMR技術やこれからのライフスタイルとの関わりについて伺いました。

最新技術を使って新たなライフスタイルを提案する「HoloDive」

渋谷駅の出口を上がり、歩くこと1分。2017年4月末にオープンしたばかりの複合施設・渋谷キャストの一角に「HoloDive」はあります。

こちらのガラス張りのスペースで、VR・AR・MR機器の体験ができるのだそう。
「こんにちは!」と笑顔で迎えてくださったのは、「HoloDive」を運営している株式会社SpiralMind代表の鎌田卓さん。

鎌田卓(かまた・たく)さん
株式会社SpiralMind 代表取締役

SpiralMind代表取締役、ブロードリーフ技術戦略担当執行役員、株式会社ADN GROUP 代表取締役/CEO。仏Dassault Delmia(旧米Deneb Robotics)、ネットイヤーグループ・プリンシパル、3Di株式会社 取締役/CTO、メタバース協会理事を歴任。バーチャルワールドを相互接続するインターバースやMixed Reality(複合現実)による未来のライフスタイルを研究。

今日はよろしくお願いします。
まずはじめに、「HoloDive」はどのような主旨で立ち上げられた施設なのでしょうか?
「HoloDive」は、株式会社SpiralMindという会社が運営している研究機関です。 最近増えているVRを体験するための施設というわけではなく、どちらかというと「技術を使って社会に対して新しい提案をするための活動」を行っています。
基本的にはエンタメ要素よりも、さまざまな業界からアイデアを集めていく研究機関の要素が強いんですね。
そうなんです。VR(Virtual Reality:仮想空間)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)も含めて、さまざまな技術を持った他分野の方々とコラボレーションをするためのコンソーシアムとしてここを設定しています。「HoloDive」をひとつの足掛かりとして、他業界の方々と新しいライフスタイルを提案していくことが大きな目的です。

また、実際にVRの技術を知らない方に向けては、どうやって技術をビジネスに活かせるのかを知ってもらうために、まずはVRを体感・想像してもらうための場所として、この場所を使っていただいています。
ちなみに現時点では、どのような研究が進んでいるんでしょうか?
現在はまだ研究というよりも、さまざまな技術を駆使しながら「何を目的として、何を作るのか」を考える段階です。

技術を通じて、どうやって人の気持ちの部分を伝えるか、技術があることによってどう人を助けることができるかを考え、多種多様なデバイスのためのプラットフォームを作っていく必要があるんですよ。
多種多様なデバイスのためのプラットフォームというと……?
たとえば、昨年話題になった「ポケモン GO」も、スマートフォンでは見ることができるけれど「カーナビで見ることができますか」と言われたら、それはもう別のコンテンツになってしまいますよね。車屋さんもカーナビに内蔵するためのものは作るけれど、車を降りたら使えない。これって本来おかしな話なんです。

お客さんのニーズを考えると、どこに行ってもすぐさまそばにいてくれないといけないはずですよね。だから、シームレスな状態でサービスを提供するための基盤が作れないといけないと思っています。

「HoloDive」のコンテンツを実際に体験してみた!

百聞は一見にしかず!ということで、ここで実際にVRやMRの世界を体験することに。 今回こちらで体験したHMD(ヘッドマウントディスプレイ)は「VIVE」と「HoloLens」です。

最初に体験する「VIVE」はHTC社が開発したVR機器。過去の記事「「VR SPACE」で体験する究極の没入感! 創業者に聞く “そう遠くない未来” にできるようになること」でも登場していましたが、360°見渡すことのできる“ルームスケール機能”を搭載している唯一の機器。VRの世界観に入り込むのにぴったりなのだそう。

早速レクチャーを受けながら体験することに。

部屋に置かれた立方体のオブジェと、体験者が手で持つコントローラーが連動しています。

コントローラーを動かしてオブジェの上でトリガー(コントローラーについているボタン)を押すと、VR上ではオブジェの一部が空間へと飛び出し、CGによる美しい世界を楽しむことができるという仕組み。

言葉で表現するだけで、映像が伝わらないのが惜しいかぎり……! 実際に体験していると、VRの世界の中であちこちを目で追うあまり、どこを見ているのかもはやわかりません……。

続いて体験したのは、Microsoft社の「HoloLens(ホロレンズ)」。
VRは “現実にはない世界” をCGによって作り出しているのに対して、HoloLensで体験できるMRでは、“目の前にある現実世界” にCGの映像を融合することができるんです!

体験中の様子はこちら。
これ、わたしの中では奥の画面にいるチンパンジーに触れている状態です。

続いては目の前にバレリーナが現れ、一緒にその真似をしています(ただの変な人)。

映っている映像は、こんな感じ。

仮想空間と現実世界とが一体に!
基本的に見えているのは現実世界なので、よりリアリティが増します。

鎌田社長が装着すると、一気に未来感が出ています。かっこいい……。

VRやARが包括されるMRという考え方、バーチャルは「偽物」ではなく「本質」

実際の体験でひとしきり盛り上がったところで、こうした技術がどのように私たちの日常に関わってくるのかを聞きました。


世間でも少しずつ知られている印象のあるVRですが、ARやMRはまだまだ知らないと人も多いと思います。鎌田さんの思うこれらの違いって、どんな部分ですか?
私の中でのMR、つまり“Mixed Reality”というのは、技術的なものとはちょっと違います。というのも、VRやARと呼ばれている技術はすべて、“Mixed Reality” の中にカバーされると考えているんです。
物理的な手段としての見え方はVRやARと呼ばれるかもしれないですけれど、我々からすると“Mixed Reality”をしていこうとする中でのひとつの途中過程だったり、表現のひとつだったり。
なるほど。つまり“Mixed Reality”は技術そのものの名称ではなく、概念のようなもの、ということでしょうか?
そうですね。私の考える“Mixed Reality”は、現実世界の情報とデジタル世界の情報の差を分からなくすることなんです。「これはつくりもの、CGだな」とか「こっちは現実なんだな」という違いに気付くことができる段階って、それはまだ“MIX”されていないんです。

どっちが本物なのかわからないくらいに“MIX”されている状態、さらには「どっちでもいいや」と感じられることになって初めて、技術としての利便性も出てくるんだろうなと思います。

現実とバーチャルの境がなくなれば、日々の生活に違和感なく馴染むということですね。
そういうことです。バーチャル、つまり、仮想空間という言葉は、どうしても日本語だと「偽物」というイメージが出てしまうのですが、もともとは「仮想」と訳すより「本質的な」という意味なんですよ。

だから、今目の前に見えているものがたとえCGだとしても、本質にあるのは仕草や性格といった、実際に存在している人間自身ということです。
バーチャルは偽物ではなくて、本質! たしかに見た目が違うだけで、そこにあるのは人間の本質の部分ですね。ほかに日常のシーンで、こうした技術が有効活用されるケースはありますか?
たとえば、MRの技術が活きるかもしれない分野としては自閉症の方の症状も挙げられますね。

自閉症……? 医療の分野にも発展できるのでしょうか?
はい。具体的には、自閉症の方は過敏な情報の集め方をすることがあるので、現実世界だと情報が入りすぎてしまってうまく日常生活を営めない場合があるんです。しかし、仮想空間になることで情報のエッセンスだけが抽出されて届けられるので、非常に過ごしやすい世界になったり、さらにはものすごい威力を発揮するという可能性もあります。

こういったことから考えても、本質をきちんと見極めることで、現実を補った状態を“Mixed Reality”ということができます。

なるほど!!! MRの世界、なんだか思っていたよりもずっと深いです……。
こういった定義をしている人は少ないと思いますが、一般的に打ち出しているような「ヘッドセットをかけると3Dに見えます!」みたいな話ではないと思っています。精神論になってしまうかもしれないんですけれど。

まだまだゲームの世界のものだったり、その場所に行かなければ体験できないもの、というイメージが一般的にはすごく根付いているかなと思うのですが、本当はもっと日常的になるものなんですよ。

実際、ハードウェアに関しては進歩のスピードが思ったより早いかなと感じています。技術もどんどん開発されていますし。ただ、受け入れる側の気持ちの問題はまだありますね。
確かにこうした最新技術を日常的なものにすることはもちろん、誰もが良いイメージを持つようになるには、まだ少し時間がかかりそうです。
たとえば、交通事故で足を失った場合に装着する義足はもう違和感なくなってきているじゃないですか。MRの技術もそんな風になれば良いなと思っています。そしてそれこそが、我々の行なっていかなければいけないことです。もっと広く認知されるようになるためには、受け入れる体制が整っていくことが重要課題ですから。

ただ、実はそのイメージの問題を解決するためには、日本が一番いいのではないかという気もしているんです。
日本人が、MRのイメージの問題を覆せるということですか?
MRの技術って、遠隔から常に監視されているという側面があるので、それを嫌だと感じる人たちもいるんですよね。どういう見せ方であればそうした違和感をなくせるか?といったことは、「思いやり」など人の気持ちを重んじる日本人にとって、得意な分野じゃないのかなと思います。
最後になりますが、「HoloDive」にはどんな人に来てほしいですか?
VRというキーワードを知らなくても構わないので、“Mixed Reality”という考え方に共感を持って、貢献してみたい!という方がいれば、ぜひ気軽に問い合わせしていただければと思います。

技術を受け入れる側にできることは?「HoloDive」に行ってきた!まとめ

今回は、2017年5月に渋谷キャスト内にオープンしたばかりの「HoloDive」を運営する、株式会社SpiralMindの鎌田代表にお話を伺いました。

お話を聞くまでは難しいものだと思っていたMRの技術。
最初はVRやARとの意味の違いや技術の違いなど、区別することばかりに意識が向いてしまいがちだったわたしでしたが、それらの技術はすべて「人にとってより便利になるもの」を開発していくためのきっかけにしか過ぎないのだという鎌田さんの言葉に、思わずはっとさせられました。

技術を提供する側だけでなく、それを「受け入れる側」にもできることはまだまだあるはず。この技術がより毎日の生活に寄り添い、特定の人ではなく、私たちの生活全体に広く認知されるようになって欲しいと感じずにはいられません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


■ 関連リンク

・株式会社SpiralMind https://spiralmind.jp/
・プレスリリース 《クリエイターのための複合施設「SHIBUYA CAST.(渋谷キャスト)」に、バーチャルとリアルの融合したMR(複合現実)専門工房「co-factory×HoloDive」が5/1開業!》https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000025457.html
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この記事を書いた人
鈴木しの
鈴木しの 95年生まれのフリーライター。専門学校でデザインを学びながら、2016年にライターとして活動を開始。現在はライフスタイルメディアを中心に活動中。人の気持ちに寄り添うような、エネルギッシュで活力のある文章が得意。