2018年1月23日

あなたの天職を”人工知能”が見つける!大注目のAIヘッドハンティングサービス「scouty」の代表に聞いた、HR×技術の未来とは?

AI(人工知能)を使って人材業界に新たなイノベーションを起こしている「scouty」。創業者である島田さんにサービス誕生の背景や、AIの登場によって変わる人材エージェントの未来について伺いました。


こんにちは!in.LIVE編集長の田中です。
今の仕事や勤めている会社が自分に本当にマッチしているのか分からない… そんな悩みを抱える人は少なくないはず。自分の知っている選択肢の中だけで転職活動をするとなると、「自分が知らないだけで、他にもっと向いている仕事があるのでは?」なんて思わずにはいられないですよね。

そんな悩みを解決してくれるのが、 “人工知能が、天職を探し出す” をコンセプトに急成長を遂げている「scouty」。インターネット上に公開されている情報をもとに、AIと機械学習の技術を活用して、適切な要件やカルチャーに合った人材をマッチングしています。

一部のメディアでは、SNS上で “会社を辞めたい” と呟いた瞬間にスカウトメールが届く!という驚きのスピード感が話題にもなっていたscouty。そんな大注目のサービスを運営する株式会社scoutyの創業者であり、代表取締役の島田さんにお話を伺いました。

株式会社scouty 代表取締役 / 島田寛基(しまだ・ひろき)さん

2015年、京都大学で計算機科学の学士号を取得。大学時代にはグーグル(日本法人)でインターンシップのほか、Incubate Fundにてさまざまなスタートアップ企業でのテック面での支援を経験。2016年、イギリスのエディンバラ大学(The University of Edinburgh)大学院で修士号「MSc in Artificial Intelligence」を取得。2016年、日本初のAIヘッドハンティングサービスを運営する株式会社scoutyを創業。

登録も履歴書もいらない!AIが天職を見つける仕組みとは?

本日は宜しくお願いします!
まず初めに「scouty」のサービスについて教えていただけますか?
はい。scoutyは、機械学習によってエンジニアの能力を自動分析し、その人に最適な企業をマッチングをするというサービスです。

個人がオンライン上に公開している様々なオープンデータをクローラーが巡回したり、API連携などを使って集めているのですが、技術共有サービスの「GitHub」や、エンジニア向けのQ&Aサイト、イベントの出席情報、匿名ブログなども含めて、同一人物だと思われる人の活動や実績となる情報を紐付けてデータ化しています。
実名公開の情報だけじゃなく、匿名のブログも評価の対象になっているのですか!?
そうなんです。そうした情報を元に、このエンジニアが「どのプログラミング言語を使えるのか」「開発力はどれくらいか」「どんなことに興味を持っているか」というのをスコア化していて、企業側はそうした人材に直接スカウトメールを送ることができるんです。
通常の転職サービスでは本人の「登録」が必須ですが、そうしたことも不要なんですよね。つまり今この瞬間にもscoutyのクローラーがオンライン上を巡回していて、本人の知り得ぬところで企業とのマッチングが行われているかもしれないと…
そういうことです。 これまでも個人でLinkedinなどのサービスに自分で登録してオンライン上に経歴を公開する人はいたと思うのですが、scoutyは、すでにその本人があらゆるサービスを通じてアウトプットしてきたオープンデータを活用しています。

今の職場で発揮しきれていないスキルや、潜在的なニーズをデータから分析するので、本人が想像もしていなかった企業からのスカウトメールが届くことがあるんですよ。企業のカルチャーなどもスクリーニングの対象になるので、提案企業とのマッチング度も必然的に高くなります。

す、すごい…!これまで人事担当者が人力で行っていたことをAIがやってくれているとは… 本人の知り得ぬところで、自分のスキルが総体的なスコア化されているのも驚きです。 「人工知能が、天職を探し出す」というコンセプトは、こんな風に叶えられているんですね!
過去には、以前、C#のエンジニアとしてSIerに勤めていた方が、scoutyからのスカウトメールを通じてWEB系企業に転職したケースがありました。
その方は、まさかその会社にC#のスキルが活かせる職種があったことは知らなかったようで、普通に転職活動をしていたらきっと出会っていなかったと話していましたね。
なるほど… つまりその方も、自身のスキルレベルが分かるようなアウトプットをオンライン上で公開されていたということですよね。

私は非エンジニアなのでピンときていないのですが、エンジニアの方はそうした自分の知見をブログなどに書いたり、ウェブ上でアウトプットすることが多いのでしょうか?
そうですね。自身のブログなどを通じて開発の備忘録やオープンソースを公開している人も昔はよくいましたが、最近ではエンジニアのためのQ&Aサイトで積極的に質問に回答している人もよく見かけます。

自分のキャリアアップのためにという動機のある人や、「自分以外のエンジニアやコミュニティに貢献したい」という意識を持っている人も多いので、実名・匿名問わず、自身の気付きや学びを積極的にシェアすることは多いですね。
コミュニティへの貢献ですか!(素晴らしい…)
そう考えてみると、最近は職種を問わず、SNSなども含めて、個人の実績を自身のキャリアアップのためにオープンにしていく傾向があるような気がします。現時点でマッチングの対象となるのはエンジニアだけとのことですが、今後はほかの業種にも拡げていく予定はあるのでしょうか?
もちろんです。昨年5月にβ版をリリースしたのですが、将来的には自身で公開しているポートフォリオなどを基にしたデザイナーのマッチングや、ウェブ上に公開された取材記事などを基にしたビジネスサイドの人材マッチングなども進めていきたいと思っています。

ゆくゆくは、就職活動を頑張るよりも、scoutyのスコアを上げる方が納得のいく就職ができる、というような世界を実現していきたいですね。

いつ転職する可能性があるかもAIが見つけられる時代に

一方で、scoutyを通じて採用を行う企業サイドからすると「転職意志の無い人」にクロージングするということの難しさもあると思うのですがいかがでしょうか?
そこは難しいポイントですが、最近は機械学習などの技術を通じて、これから起こりうる「転職の可能性」というのも測れるようになっているんですよ。
転職の可能性も!?そんなの本人ですら分からないのに…
例えば、その人が現在勤めている企業では、何年ぐらいで会社を辞める人が多いのか?というデータから、退職年数の分布を会社や役職ごとに出したり、予測退職確率を計算することができます。

「◯年後にはいまの会社を辞めているかもしれない」というのをデータで出しておいて、そのタイミングでスカウトメールを送ったりすることもできるんです。

他にも、その人のSNSでの発言などを検知してスカウトメールを送ることもあります。「転職したい」「辞めたい」といった発言をチェックして、転職可能性を総合判断していますね。

なんとSNSの発言まで見られてるとは…!気が抜けないですね(笑)。

「AIで人材業界に大きなインパクトを起こしたい」
サービス誕生のきっかけ

scoutyは日経新聞で、次世代の “ユニコーン企業(=企業としての評価額が10億ドル以上のベンチャー)”として注目されていましたよね。もともとサービスの構想は島田さんが以前から描いていたものだったのでしょうか?
はい。私自身はもともと京都大学で人工知能の勉強をしていて、その後はイギリスのエディンバラ大学院で人工知能修士を取ったのですが、scoutyは卒業の直前に立ち上げた会社です。

AIを使って一番大きなインパクトを与えられるのはどの業界か?と考えたときに、真っ先に人材業界が思い浮かびました。

もともと、人材業界が抱える課題などに問題意識があったのでしょうか?
そうなんです。
これまでも自分の周りにいた優秀な仲間たちが一般的な就職活動を経て、その人のスキルが完全に活かしきれないような会社に入社していたり、それでも週末は自分で得意のイラストを書いてTwitterにアップしていたりするのを見ていました。

本人が納得しているので問題ではないのですが、今の「就職活動」というシステムに則ったときに、結局その人自身が知っている選択肢からしか選択できないということに疑問を感じていたんです。
確かに「もっと自分に合った企業があるのかも…」と思いながらも、それを自分の力だけで調べることって難しいですよね。

名前の知っている大手企業ばかりが候補に入って、あまり知られてはいないけれど自分のやりたいことがしっかりできる会社というものにはなかなか自分では出会えないかも。

そうなんです。でもそれは、その人自身が悪いとかではなく、今の就職や転職のシステムそのものが、マッチングというものに向いていないんだと。全体として最適化されていないからこそ、自分がこれまで研究してきた機械学習や人工知能が与えるインパクトも大きいと思いましたね。

先ほどお話した退職年数の確率分布、といったことも、在学中に学んだ知識を実装したものなんですよ。

へええ!島田さんが学ばれていた最先端の人工知能を、実用的な機能に落とし込んで生まれたのが今のscoutyだったんですね。

AIと生きる未来における人の価値とは?
非エンジニアに技術を学ばせる理由

scoutyのようなAIを活用した人材サービスが登場することで、これまでの人材エージェントの役割はどのように変わるでしょうか?
scoutyに限らず、AIが今ある仕事を代替していく流れの中で、企業の紹介や人材を探す作業など “運用の代行” だけをしているエージェントは厳しいかもしれませんね。

人材エージェントの価値は、転職者に寄り添って最後のひと押しをしたり、採用側のクロージングを手伝うような、業務としてもより最終的な行程にシフトしていくんじゃないかと思います。

なるほど… AIが人材業界に入ってくることで、エージェントそのものの「価値」が明確になってくるわけですね。
エージェントが無くなるということはないと思いますが、AIの介入によって、今業界として当たり前になっている仲介手数料も変わるだろうし、基本的な面接ですらAIが出来るということもあるかもしれませんね。
そういえば御社では、全社員に対して(非エンジニアも含めて)Pythonの研修を行っているというのを拝見しました。これも何か意味があるのですか?
そうですね。私たちの会社ではエンジニアでなくても技術のことを学んで欲しいというカルチャーがあって、インターンやビジネス側の社員に対しても、技術や基本的な人工知能の研修をしています。

これは僕の持論ですが、オペレーションを変えることで2~3倍の効率化というのは出来ても、もっと大きな10倍の変化をしようと思ったときには、やっぱり技術の力が必須だと思うんです。

そうしたときに、技術の話がエンジニアと同じ目線でできる人材であってほしい。技術者の方が偉いというわけではないのですが、企業のカルチャーとしてそのマインドは大切にしていきたいし、「AIに置き換えられない人材」に自分たちがならなければという想いがあります。

技術に疎いことで、今の自分のこの仕事はAIに取って代わられる可能性がある、ということにも気付けないようでは、これからの時代で価値を高め続けることはできないですから。
なるほどなぁ…
まさにAIを扱う企業だからこその視点、とっても勉強になりました。貴重なお話、有難うございます!

編集後記

いかがでしたでしょうか。
今回は、いま大注目のサービス「scouty」の島田社長にお話を伺いました。

AI(人工知能)という最新の技術が「自分に合った企業で働きたい」という誰もが抱える課題を解決していることは、これまでなんとなく遠くに感じていた人工知能の技術が、ぐっと身近なものに感じさせられます。

また今回取材をしたscoutyのようなサービスに自分のスキルを認識してもらうためには、そもそも自身が積極的にオンライン上にアウトプットを出している必要があるということ。情報をよりオープンにしていく時代の変化にも、しっかり自分が適合していかなければと学ばせられた取材でした。

人工知能で人材業界にイノベーションを起こすscouty、今後の更なる展開が楽しみです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

追記(2018/8/27)

本取材をさせていただいたのは2018年1月でしたが、同年8月に【正式版】のリリースも発表されました(詳細はこちら)。

正式版では2017年5月25日より提供していたオープンβ版の機能に加えて、候補者の転職可能性の変化をアラート通知するタレントプール機能や、候補者のSNSページなどからタレントプールへ追加できる「逆引き機能」が実装されています。

関連リンク

株式会社scouty https://scouty.co.jp/
この記事がよかったら「いいね!」
この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。