2018年6月7日

6月15日「民泊新法」が施行、民泊解禁で広がる新たなビジネスの可能性とは?ICT活用で宿泊施設も2.0へ

6月15日から、いよいよ民泊が解禁になります。ICTを活用した新しいビジネスの可能性は?民泊を始めたい人はどんなことを気をつけたらいいの?民泊に詳しい行政書士の石井くるみ先生今後の展開についてお聞きしました。


こんにちは!in.LIVE編集部です。
最近よく聞く「民泊」。この民泊制度が、今年6月15日にがらりと変わることをご存知ですか?大規模な規制緩和により、より多くの個人や事業者が合法的に民泊に参入できるようになります。

また、旅行者の本人確認に顔認証システムなどのICTデバイスの使用を活用することで、これまで必須だったフロントが不要となったり、外国人旅行客対応をリモートで行ったり……と、ITの利活用の場もどんどん広がっていきそうな予感。

民泊に詳しい日本橋くるみ行政書士事務所の石井くるみ先生に、今後の民泊をめぐる新しいビジネスの可能性や、民泊をはじめてみたい人へのアドバイスなどをお聞きしました。

石井くるみ 先生
日本橋くるみ行政書士事務所・行政書士

PROFILE 早稲田大学政治経済学部卒業。日本橋くるみ行政書士事務所代表行政書士。不動産ビジネスに関する法務及びコンサルティングを専門とし、大企業の法務顧問から、個人ホストの民泊・旅館業の許可取得に至るまで、幅広いサポートを提供している。民泊に関する講演、セミナー、寄稿などの実績多数。主な著書に「民泊のすべて」(大成出版社)、共著に「行政書士の業務展開」(成文堂)など。

ー 民泊の制度が6月から変わるそうですね。

そうですね。6月15日に旅館業法の改正と住宅宿泊事業法、いわゆる「民泊新法」が同時施行されることで大きな規制緩和が起こり、合法的に民泊がやりやすくなります。簡単な届け出の制度もスタートしますし、旅館業の許可ハードルも下がります。

ー 民泊市場はどんな風に変わるんでしょうか?

一気にガラっと変わると思いますよ。これまで民泊を運営する場合は、旅館業法上の許可が必要だったのですが、許可のハードルが高く、大半の民泊事業者が許可を取れなかったわけです。それでも、大半の業者が真面目に運営していたのですが、中には無許可のためコンプライアンス意識の低い事業者もいて、トラブルも横行していました。

そういった状態を解消するために、今回の法改正が行われたわけですね。

ー なるほど。今回の法改正のポイントは何でしょうか?

今回の2つの法改正で大きく変わるのは、主に二点あります。
一つ目は、これまで旅館やホテルを運営しようとした場合、客室の数が5部屋とか、10部屋以上でないと旅館業法上の申請ができなかったのですが、一部屋でも申請ができるようになります。

もう一つは、これまでは、旅館業法上フロントの設置が必須でしたが、これをタブレットなどのICTデバイスなどを使うことで本人確認等がきちんとできることを条件に、なくてもいい、と緩和されました。民泊の場合、マンションの一室にフロントを設けて有人チェックインをしなくてもいい、というのはかなり大きい規制緩和ですよね。

ー それは新しいビジネスの可能性も考えられそうですね!

そうですね。すでに、コンビニが本人確認やカギの受け渡し、荷物管理などハブになる管理事務所として活用されることが決まっていますし、今後もビジネスとしての広がりがあるのかなと思います。

このほか、部屋の安全管理のためにカメラやタブレットを備え付けたり、スマートロックをつけたり、顔認証システムを導入したりと、ITの力を活用する場面が増えていくでしょうね。

ー 面白そう!今後ホテルが「変なホテル」みたいに変わっていくのかも?

※変なホテル:ハウステンボスが運営する、ロボットが接客を担うホテル

あそこまでロボットがすべて接客する……という形にはならないかもしれないですけれど(笑)。ただ、これまで旅館業では、労働集約的な働き方が課題になっていたので、ITの活用で効率的な運営ができるようになってくると思います。

今回の旅館業法の改正をきっかけに、ITを活用した既存のホテル・旅館の運営合理化が進むことが期待されます。

ー 逆に、これまで旅館業にITの力があまり入ってこなかったのは何か理由が?

うーん… それは純粋に、旅館業は家族経営が多くITの専門家が関与する機会が少なかったからではないでしょうか。例えば「集客のためのウェブサイトをつくりたいが、どうすればいいのか」「ネット上で集客をしたいけれど、やり方が分からない」と言った声は現状でも多いです。

そういったITを活用したい経営者のために、例えばインターネットを活用した集客を代行するといったビジネスはニーズが出てくるかもしれませんね。

ー 例えば、ITを使った言語通訳のサービスも今後出てきそうですね。

実はすでにあって、例えばフィリピンのコールセンターとつないで、外国人からの予約や言語に困った際の対応を担う、というサービスもあるようです。実際の現場では、Google翻訳などを活用しているので、言語の面ではそれほど困ることはないみたいですよ。

ー 民泊をビジネスとして始めてみたい人が、注意すべきポイントとはなんでしょうか?

規制が緩和された分、アメとムチというか、罰則が強化される面はあります。

これまで届け出をせずに民泊をしていた場合でも「罰金3万円」という、70年前からインフレしてないんじゃないかというような罰金額だったんですが(笑)、これが100万円に一気に引き上げられます。

ー 罰金が3万円から100万円に…!? それは随分と変わりますね……!

つまり「許認可のハードルを下げたんだから、きちんとルールを守って届け出をしてくださいね」ということなんです。 あと、注意すべきと言えば、会社の規定で副業禁止なのに、無断で民泊を運営していたのがバレて問題になってしまう……ということもあります。

ー 副業規定に引っかかると。そ、それはまずい……。

ただ、最近は就業規則を改正して副業・兼業を認めるところも増えてきましたので、ここはきっちり会社に確認する必要があるでしょうね。

あとは、もちろん、賃貸の場合は、勝手に部屋を民泊に使うことはできません。持ち主の許可を取る必要があります。マンションの場合は、管理組合に確認を取ることが必要ですね。

ー さすがに賃貸物件を勝手に他人に貸してしまうのはNGですね。民泊の届け出の際のルールって、具体的にどんなものでしょうか?

例えば、住民票など本人確認が必要だったり、建物の広さや消防、安全面が基準に合っているか、といったものがありますね。ただ、家主同居型のいわゆる「ホームステイタイプ」の民泊の場合、基準がゆるやかに設定されているので、まずは「自宅の一部を貸す」というところから始めるのが一番ハードルが低いといえます。

無人の部屋を民泊として使う場合は、国土交通省の登録を受けた管理業者に管理を任せないといけない、というルールになっています。

ー なるほど。民泊を運営する上で、起こりがちなトラブルはどんなものがありますか?

多いのが周辺住民とのトラブルです。例えば、「夜中に毎晩パーティーをしていてうるさい」「大量のごみが捨てられている」「ゴミの分別がされていない」などのクレームが入ったり……。現在、民泊利用者の8割が外国人と言われているのですが、見知らぬ外国人が近所を出入りすることに対して「治安面が不安だ」といった不満が寄せられることもありますね。

ー うーん、マナーの問題は深刻ですね……。

実は、マナーと言うか、習慣の違いが背景にあったりするんですよね。例えば、中国人の方は、廊下にごみを出す方がいらっしゃるんですが、実は中国では、ごみの収集業者が、玄関先にごみを集めに来るのが一般的だからなんです。でも、同じようなことを日本でやってしまったらトラブルになりますよね。

同じように、特にアジアは喫煙文化が根強く、日本のように喫煙場所がきっちり決められていないケースもあります。こういった旅行者のために、あらかじめごみの分別法や喫煙のルールをつくって、あらかじめ説明したり、部屋の分かりやすい位置に貼っておいたりといったことが必要になってくると思います。

石井先生が2018年5月に出版された「民泊のすべてー旅館業・特区民泊・住宅宿泊事業の制度と合法化実務

ー 文化の違いを理解することが大切ですね。そもそも海外では、民泊は盛んなんでしょうか?

元々、民泊は欧米から入ってきた文化です。日本は割と空き部屋の有効活用と言った文脈で民泊に乗り出す人が多いですが、もともとは旅行者との交流を求めるホームステイタイプが民泊の原型なんです。私の知り合いでは、フランスのブドウ園に民泊して、自家製ワインを楽しんだ……と言った人もいました。

ー ブドウ園で民泊!素敵です。日本でも民泊を通じた地方創生が進むかもかもしれませんね。

そうですね。日本でもグリーンツーリズムとして、古くから農家民宿の制度がありますよね。結構地方の方からの民泊に関するご相談も多いんですよ。シニアの方が民泊という新たな目標を見つけて、いきいきとして元気に燃えていらっしゃることもあります。

ネットもできなかった方がメールでやり取りできるようになったりとか、英語を勉強してゲストとあいさつしたりとか……。地方で眠っている良いものが活性化していくモデルになるかもしれませんね!


ー これから民泊を手掛けてみたい人が、心がけるべきことは何でしょうか?

これはサービス面も含めた話ですが、「安かろう悪かろう」という考え方はあまり良くないと思います。安い家具を入れて、価格を下げて運用するよりは、付加価値の高い素敵な部屋を提供して、ゲストの方に喜んでもらった方がいいんだと思います。 民泊が普及している国の旅行者は、利用者も「運営者が普通の人だ」と分かっていますし、部屋を散らかしたり、自分がされて嫌なことはしませんし。Airbnbも、宿泊者とオーナー、双方が評価しあうシステムになっていますよね。

ー 最近ちょっと思うんですが、例えばカーシェアリングも利用者に対するレビューが付きますよね。そういう利用者の評価を「信用情報」みたいな形で一元化できたら便利だな、と。

そうですね。シェアリングエコノミーを利用する方って、他にも色々なサービスを活用されていますし。フェイスブックのアカウントが様々なサービスで活用できるように、ユーザー情報も一元化できたら便利かもしれませんね。

ー あらゆるところに自分の信用情報が反映されていると思うと、悪いことはできなくなりますね(笑)。今後の民泊の課題は何でしょうか?

私は、民泊市場は今回の法改正を機に、いったん白紙に戻ると思っています
無許可営業が民泊のネガティブなイメージにつながってしまっていましたが、無許可の民泊が一掃され、新たにゼロからスタートすることで業界の質が高まり、一般消費者にも民泊が広まってくるのかなと思います。

ー これからの民泊の展開が楽しみになりました!ありがとうございます。

編集後記

以上、いかがでしたか?
民泊解禁により、今後本人確認やチェックインなどの場面でも、顔認証などITデバイスの活用が認められるようになります。こうした動きが加速することで、今後は民泊だけでなく、既存のホテルや旅館などでもITの利活用が進んでいきそうです。

ITの利活用で、宿泊施設も2.0へーー。今後の新たな動きに注目していきたいです。
最後まで読んでいただき、有難うございました。

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この記事を書いた人
in.LIVE 編集部
in.LIVE 編集部 インフォテリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。