2018年7月17日

IoTボタンがつなぐ運命の赤い糸。不確実性がドキドキ感を高める、次代のリアルタイムマッチングサービス『together』誕生秘話

「人×アイデア×テクノロジー」を軸に、イベントECサイト『街コンジャパン』や、恋活・婚活マッチングアプリ『Couplink』の運営を行う、株式会社リンクバル。人と人との出会いの場を創出し続ける同社が、新たに手掛けるリアルタイムマッチングサービスの、その内容に迫ります。


こんにちは。ライターの香川妙美です。
突然ですが、皆さんは運命の出会いを信じていますか?業務連絡どころか愛の告白までチャットで済まし、「出会いはインターネット」というカップルも珍しくはないこの時代。だからこそ、意図しないリアルな恋の始まりに憧れを抱く人は多いのではないでしょうか。

今回、お話を伺った株式会社リンクバルは、この“運命の出会い”をIoTボタンで創出するというユニークなサービス『together(トゥギャザー)』を2018年5月にローンチ

サービスの概要、実施に先駆け2月に行われた実証実験の様子、今後の展開について、株式会社リンクバル テクノロジー推進室 室長の根本さんと、広報の出来さんにお話を伺いました。

株式会社リンクバル テクノロジー推進室 室長 根本純さん

幼少期、父親の仕事の都合で韓国で暮らす。ビル・ゲイツに憧れて学生起業するも失敗。 国家公務員、システムエンジニアを経て、再度独立した後、株式会社リンクバル創業時に入社。街コンジャパンのGrowthHackに関わる。「新しいことを早めに始める」を信条に新規事業を開始する。

株式会社リンクバル 広報 出来千春さん

大学まで香川県で過ごし、就活が始まる直前に「街コン」をニュースで見て衝撃を受ける。「自分も人と人との出会いに貢献したい!」とリンクバルに電話。ちょうど新卒採用を始めた年ということもあり、新卒一期生としてリンクバルに入社。3年間、街コン・婚活ツアー・グルメイベントなどさまざまなイベントを企画・運営し、現在は広報として人と人との出会いに貢献できるよう活動している。

発端は「店員さんを呼ぶ感覚で異性を呼べたらおもしろいよね」という会話

今日はよろしくお願いします! さっそくですが、飲食店のテーブルに置かれたIoTボタンを押すと、異性がやってくる――。最先端の技術をこんなユニークに使うなんて…というのが率直な感想なのですが、サービスが生まれたきっかけは何だったのでしょうか。
お酒の席で友人から、「ここにボタンがあって、押すと異性が来てくれる。そういう世界っておもしろくないですか?」という会話を振られたのが発端です。その画をイメージしたら、確かにおもしろい。うん、やってみようと動き始めました。昨年10月末のことです。
確かに、店員さんを呼ぶボタンがあるなら、店員さん以外の人が来るボタンだってあってもいいのかも(笑)。プロダクトって、本当に何気ない会話から生まれるものですね。そこからどのように実現していったのでしょうか。

△株式会社リンクバルと京セラコミュニケーションシステム株式会社によって開発されたIoTデバイス「together」

まずは、そのボタンをどのように用意しようかを考えました。
現在、居酒屋と呼ばれる飲食店は、国内に1万3,000軒くらいあります。その店の一つひとつのテーブルにボタンを設置するとなると、LTE通信だとちょっと割高なんです。かといって、wi-fiだと通信が場所によって不安定だったり。通信上のトラブルを店舗で起こすわけにはいかないので、この案も却下。

あとはタッチパネルだと電源が必要になるので、飲食店の協力を得にくいんじゃないか?とか。ほかにも考えなければならないことが多くて。
うーん、確かに。電波が届きにくい地下のお店もありますし、通信環境を整備するのって意外と大変なんですね。
そうなんです。安価で、インターネット接続をしなくて済み、データの通信が単純という条件を満たすものがないかなあと。そんな中、運良く新聞記事で見つけたのが「IoTネットワーク」でした。

現在、実用化されている規格として、Sigfox(シグフォックス)とLoRa(ローラ)があるのですが、Sigfoxは基地局を多く必要としない長距離伝送が特長で、低コストかつ低消費。さらには人口カバー率が7割を超えていると知り、これはいいぞと。そこでサービスを提供している京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS社)に僕からコンタクトを取りました。
KCCS社の反応はいかがでしたか。
おもしろさは十分だったようで、とてもウケてくださいました。「ぜひやりましょう」という返事をいただき、準備がスタートしました。

出会いの手段は確保できたわけですね。では、舞台となる飲食店にはどのように協力を仰いだのでしょうか。
こちらは、なかなか大変でした。「出会い」というジャンルに少し抵抗があることに加え、IoTボタンで異性を呼ぶというサービスの仕組み自体の理解が進まず…。飲食とテクノロジーは、ジャンルとしてもかけ離れていますからね。

とはいえ、興味を示してくださる飲食店さんもいて、2月の実証実験にあたっては銀座・コリドー街にある3店舗が協力してくださいました。

実証実験で実感した「together」設置店でのドキドキ

いま、お話に出た実証実験のことを聞かせてください。まず参加者はどのように募ったのでしょうか。
当社サービスに登録されている首都圏在住の25~35才のユーザーに参加を呼びかけました。男女各5組計20名を募集したのですが、募集スタート直後から男性の応募はすごかったです。一方、女性の応募は15組くらい。そこから抽選で参加者を決定しました。
当日はどのような流れでマッチングされるのでしょうか?
まずは会場近くでガイダンスを行い、その後男性にお店に入っていただきました。
本サービスのプラットフォームとなるアプリ『together』を利用している旨を店員さんに伝えていただくとIoTボタンを渡されるので、それを押して、その店で一緒に食事をしたい女性を募集するといった具合です。
「この店でお相手を募集していますよ!」ということがIoTネットワークを通じて女性側に届くということですね。

はい。具体的には、『together』の地図画面上にピンが立ちます。ピンをタップすると、お店の情報と申し込み画面が表示されるので、そこからお申し込みいただき、店まで足を運んでいただきました。お店で『together』の申込番号を告げると、男性の待つ席に案内され、そこでご対面という流れです。
おお!ここでようやく…!男性側は、そもそもお相手が来るかどうかも実際に来るまで分からないということなんですよね。
そうですね。今回の実証実験では男性に先にボタンを押していただきましたが、もちろん女性が押すこともできます。アプリ上では男女どちらがボタンを押したのかアイコンで分かるようになっています。

通知は、お店の半径1km圏内に飛ぶように設定しました。これは、待つ側のリミットが1時間と想定して決めています。エントリータイムを30分として、お店まで最長1km歩いたとしても15分あれば着くということを前提にしています。
待てる時間も考慮して設計されているのですね!参加者や協力店の反応はいかがでしたか。
参加者に事後アンケートをお願いしたいのですが、すべての回答者からポジティブフィードバックをいただきました。「ドキドキした」という感想が目立ちましたね。どういう人と出会えるのか分からない。むしろ、来てくれるのかも分からない。その不確実性がそんな気持ちを生んだのではとないでしょうか。

リアルな意見として男性から「女性が食事を目的にしていない点が良かった」というものもありました。飲食店で男女が出会うサービスのなかには、男性が女性の飲食代を負担するものもあるんです。そうなると、おごられることが目的の女性が紛れたりもするので、男性側としては一緒にいてもつまらない。そういう経験がある人にとって『together』は、楽しめるサービスになると思っています。
飲食店に関しては、売り上げに貢献できたこともあり、ご協力いただいた3店舗のうち2店舗からは、「有料でもお願いしたい」という感想をいただいています。特にウィークデーは客足が伸びにくいので、そこに合わせてサービスを組み込めると、より喜んでいただけそうです。

半数以上が押してしまう!?IoTボタンの今後の展開は

その後、5月15日にアプリをリリース(現在はiOSのみ対応)されていますが、ユーザーの反響はいかがでしょうか。
お店の方が言うには、ボタンをご案内すると男女関係なく6割が押しているそうです。女性も押していることが意外でした。当社の場合、オフラインイベントの参加者も、オンラインデーティングのユーザーも男女比はほぼ均等なのですが、業界的には【男性75:女性25】と言われていて、女性のアクションが薄いんです。けれども、出会いの糸口を、モノとしてそこにある“ボタン”にすることで、女性もアクティブになるんだなあって。

婚活イベントはコモディティ化しつつあるので順当な数値とも言えるのでしょうが、やはり今ここでしか押せないという環境が後押ししている面はあると思います。

△実証実験で実際にマッチングしたグループの皆さん

協力店舗の推移に関しては、いかがですか。
現在は銀座に加え、押上、六本木エリアでも使用できるお店が出てきました。5月にローンチしたばかりなので、ユーザー、お店ともに拡大していくのはこれからですが、いまは協力店を増やすことを優先しています。
使えるお店が増えると、そのエリアにいるユーザーも使いやすくなりますもんね。
そうですね。ユーザーの利便性という視点でいうと、最終的にはボタンなしで、アプリだけで完結できるところまで持っていきたいですね。ボタン自体はフックにはなりますが、本質的なねらいは世の中の活性化につなげることなので、出会いのみに留まらないサービスを提供したいと考えています。

国の統計を用いて試算したところ、現在、夜帯の遊興に関するマーケットは2兆円あることが分かっているのですが、今後、マーケットを構成するカテゴリーはどんどん変わっていくと予想しています。というのも、Airbnb(エアビーアンドビー)やUBERなどの配車サービスのように既存の枠を超えてCtoCに広がる流れが、今後リアルマッチングサービスにも来ると思っているからです。ここで大切なのが、裾野が広がる前に挑戦し、前例を示すこと。イノベーター理論のとおり、アーリーアダプターを超えた辺りから、それまで様子をうかがっていた人たちもイエスと言いやすくなる傾向があるので、CtoCに広がる前にイニシアチブをつかめれば、先行者メリットも享受できると考えています。

幸い人と人のリアルマッチングという分野は宿泊やタクシーと比べて規制が緩いので、まずはあらゆるチャレンジをしたいですね。

日本の閉塞感を打ち破る“遊び”の部分をつくりたい

街コン、オンラインデーティング、そして今回のリアルマッチングサービスと、御社は人との出会いをあらゆる形でつないでいます。この新しいサービスに対する御社の期待を聞かせてください。
来るかどうかさえも分からないところに異性が現れるという、この『together』は、今までの街コンにはない感覚です。友人に「街コンに参加しよう」と声をかけても「ノー」と言われる可能性はありますが、飲んでいる席での不意な誘いなら気持ちを構えることなく、受け容れることができるのではないでしょうか。

『together』は出会いのきっかけになりますが、何も恋人探しに限定はしていません。恋愛要素は街コンよりも低く、気軽なものと思っていただきたいですね。例えば、同僚との飲み会でも男女混成って普通だし、そこで男女の関係を意識することのほうが少ないはずです。『together』も、まずは交友関係を広げるツールとして活用いただきたい。いずれはシニア層が利用してくれるようになると、私としてはとても嬉しいです。
なるほど、シニア層ですか。確かにもっとカジュアルにこの場所で今おしゃべりしない?とか、お散歩相手募集!とか。そういうのがあっても良いですよね。
『together』のように出会いをフランクにしていくことは、むしろ今の日本に必要なことだと思っています。今のご時世、逸脱に対して非常に厳しいというか、閉塞感がありますよね。遊びの部分がないと、自分たちの子どもの世代は本当に生きづらくなるんじゃないかと心配しています。

人と人との出会いを簡単にすることで、少し羽目を外す機会が生みだしたいというか。非日常を楽しむことで、翌日からの活力につながると良いなと思っています。

リアルタイムマッチングサービス『together』 編集後記

厚生労働省の関係機関によると、2016年現在、交際相手がいない独身者の割合は、男性7割、女性6割にのぼるそうです。その一方で「いずれ結婚するつもり」と考える独身男女は9割弱に達しているのだとか。そんな“結婚への意欲はあるものの、交際には消極的”な男女にとって、『together』は一歩踏み出すためのサポーターになるのではないでしょうか。

運命の出会いは、自分で作り出す時代。テクノロジーの発展は、映画や小説のなかの物語をリアルにしてしまうんですね。わたしも、あと10才若ければ……。根本さん、出来さん、ありがとうございました!

関連リンク

・株式会社リンクバル https://linkbal.co.jp/
・リアルタイムマッチングサービス「together」 https://www.together.center/
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この記事を書いた人
香川妙美
香川妙美 山口県生まれ。音楽業界での就業を経て、2005年より自動車関連企業にて広報に従事。2013年、フリーランスに転身。カフェガイドムックの企画・執筆を振り出しに、現在までライターとして活動。学習情報メディア、広告系メディア等で執筆するほか、広報・PRの知見を活かし、各種レポートやプレスリリース、報道基礎資料の作成も手掛ける。IT企業・スタートアップ企業を対象とした、広報アドバイザーとしても活動中。