2018年4月20日

最先端のIoTデバイスが網羅されたスマートホステルに潜入!
&AND HOSTELが提案する ”ITと暮らす” ちょっと先の未来

日本初のスマートホステルとして、2016年に開業した『&AND HOSTEL』。開業のねらい、宿泊などのサービス、IoT体験の内容について、and factory株式会社 茶置貴秀さんに伺いました。


in.LIVE読者の皆さん、はじめまして。ライターの香川妙美です。
近年、外出先で外国人観光客とすれ違うことが多くなりましたよね。わたしが先日出かけた四国の都市でも、アジアや欧米からの旅行者の姿をたくさん見かけました。

実際、訪日外国人は年々増加しています。観光局のデータによると、昨年は2,869万人もの外国人が日本を訪れており、これは5年前の2.7倍(2013年:1,036万人)にも及びます。2020年の東京オリンピック開催に向け、この傾向はますます強くなっていくことでしょう。

そんなインバウンド需要の高まりを受け、2016年に宿泊事業に参入した and factory株式会社は、2018年4月現在、『&AND HOSTEL(アンド ホステル)』のブランド名で、計5か所のホステルを展開。 “Smartphone Idea Campany” を標榜する同社の既存事業を活かした新しいチャレンジに、in.LIVEが迫りました。

お話を伺ったのはand factory株式会社の茶置貴秀さんです。

茶置 貴秀(ちゃおき・たかひで)さん
and factory株式会社 IoT事業部 

新卒でデザイン設計事務所に入社。オフィス移転のプロジェクトマネジメントに従事。退職後、現在の人の最期や葬儀のあり方に疑問を感じ、葬儀社を設立。2017年よりand factory入社。

IoT×リアルコミュニケーションで、新しいホステルのスタイルを提案

< &AND HOSTEL AKIHABARA の内観 >

本日はよろしくお願いします!
“IoTが駆使されたホステル”と聞くと、どうしても無機質なイメージを持ってしまいがちですが、&AND HOSTELは、機能面をめいっぱいIoTに寄せる一方、そのほかの部分は温もりが感じられますよね。たとえば、ロビーラウンジは天然素材がふんだんに使われています。開放的な雰囲気も相まって、くつろぎやすい印象を受けました。
やはりホステルなので、人と人との交流という本来あるべき部分は大切にしています。むしろ、そういったソフト面を際立たせるうえで、IoTの強みを活用しています。ラウンジにもその工夫が隠れているんですよ。
ペンダントライトの根元に設置した定点カメラで、ラウンジにいる人を検知しているんです。それで、15人以上を検知できたら客室に置かれたスマートスピーカーが、ゲストに案内するんです。「ラウンジに人が集まっています。遊びに行ってみませんか?」って。皆さん、はじめはびっくりされます(笑)。

目に見えない、感じられない部分をIoTがカバーして、リアルな体験につなげる
&AND HOSTELならではの過ごしかたを、このようにして提案しています。
一方、客室はプライベート空間ということもあり、いわば ”IoTの体験ルーム” になっていますよね。とはいえ、小難しいことは一切なく、一回のタップでここまでできるのかと、つい目が丸くなります。

<宿泊者はチェックインの際にスマートフォンを受け取る>

< &AND HOSTEL AKIHABARAの IoTルーム>

<お部屋の中の電気機器などはすべてスマートフォンで一括操作!>

チェックイン時にお渡しする端末に、滞在中に想定しうるあらゆるシーンが設定されているので、ゲストはそのときの気分や行動に合わせて操作すれば、室内が選択したモードに切り替わるようになっています。

たとえば「おやすみモード」のアイコンをタップすると、カーテンが閉まって、ライトの照度が落ち、エアコンが微風モードに切り替わるといった具合。複数のデバイスが同時に動き、最適な環境を整えてくれるのです。もちろん一つひとつを個別に動かすことも可能ですし、スマートスピーカーに呼びかけることで対応できるようにもなっています。

一度のタップで室内環境が整うところは、一番のこだわりなので、ゲストから「Wow!」といった声が上がるたび、嬉しくなる(笑)。僕らにとって一番の誉め言葉です。

新事業創出の目的と時代の流れが合致した、スマートホステル誕生のきっかけ

御社はもともとアプリ開発などをされている会社ですよね。宿泊事業に参入するきっかけは何だったのでしょうか。
弊社では、人々の生活を豊かにするサービスを提供することをミッションとしています。それを私たちは「日常の中に “&” を届ける」と表現しています。設立当初から様々な領域のスペシャリストがジョインしていて、それぞれの得意領域×スマートフォンの掛け合わせで “&” を届けるアイディアを創出しています。

2015年の夏ごろは、ちょうど中国人観光客の“爆買い”をはじめ、海外ビジターに関する話題が頻繁にニュースで取り上げられていた時期でした。東京オリンピックの開催もすでに決定しており、日本に来る観光客はますます増えていくだろうという期待が膨らむ一方、宿泊施設は足りるのだろうか、もっと気軽に旅行を楽しんでもらうには、といった懸念や課題も同時に挙がっていました。

そんな市場背景をみた不動産領域のスペシャリストが、ホステル業態にビジネスチャンスがあると考えました。そこからand factoryの強みを活かせるやり方は何だろう?!と喧々諤々、話をした結果に行き着いたのが「IoTホステル」だったんです。

そこにビジネスチャンスを見いだされたのですね。
その一年後、第1号店となる「&AND HOSTEL FUKUOKA」(福岡市博多区・2016年8月開業)が誕生することになるのですが、なぜ東京ではなく地方都市の福岡を最初に?

<福岡にオープンした「&AND HOSTEL FUKUOKA」>

物件の規模や状態といった側面もありますが、福岡市は2014年から国家戦略特区(※1)に指定されていて海外に目が向いているんです。なので、福岡空港がLCC の就航数を増やしたり、博多港も外航クルーズ船の寄港数が日本一だったり、アジアの玄関口として活躍しているんですよ。さらには、産学連携の取り組みにも力を入れています。そういった動きをいち早く取り入れていこうという考えから、福岡が1号店になりました。
(※1 日本の経済活性化のために、地域限定で規制や制度を改革し、その効果を検証するために指定される特別な区域のこと。福岡市は、「グローバル創業・雇用創出特区」として、創業の支援と雇用の創出に取り組んでいる) とはいえ、外国の方にとって日本のイメージは、TOKYOであり、ASAKUSAなんです。ですから、次の展開はやはり東京で。福岡でビジネスモデルが確立できたのを機に、2017年4月、「&AND HOSTEL ASAKUSA NORTH」を開業。これを皮切りに、現在都内に5店舗を運営しています 。
その5店舗すべてが東京の東側に集まっていますが、何か理由があるのでしょうか。
都営浅草線からのアクセスが良い点は大きいです。羽田空港からも成田空港からも一本で到着できるので。

渋谷や新宿、近年はさらに西にある高尾山など、観光地として人気の高いエリアは都内に点在していますが、それは目的地であって宿泊地ではないんです。実際、滞在時の拠点となる宿泊施設は、空港からのアクセスが良い沿線を選ぶビジターが多い。これは、ホステルを一年半運営してきて掴めた傾向の一つです。

サービスありきのデバイス選びと、IoTの底上げに寄与したい思いの両立

ゲストルームのことに話を戻しますが、シーンに合わせて環境を整える機能って、とても便利ですよね。ただ、その設定がベストかどうかには個人差があります。この辺りの最適化はどうやって図ったのでしょうか。

おっしゃるとおり、寝るときにすべての灯りをオフにする人もいれば、常夜灯は付けたままの人、なかにはテレビを消さない人もいますよね。最初は、想定されるシーンを一つずつ掘り下げて考えることから始めました。そのうえで大切にしたのは、こうなれば便利になるだろうという視点、そして、ゲストが&AND HOSTELに期待しているであろう体験が提供できること。

これらをプロジェクトメンバーそれぞれが普段張っているアンテナから拾って共有するのですが、体験もそこから生まれるアイデアもバラバラなので、初期は喧々諤々と議論していました。とはいえ、持ち寄った内容のうち分母の大きいものは、世の中のニーズも高いだろうという仮説が立ちます。そこからサービスに落とし込み、合わなければ削ぎ落として新たなものを試すということを繰り返して現在に至っています。
実際に改善したサービスはありますか。
客室のうちドミトリータイプは、いわゆるカプセルホテルのような仕様なのですが、海外からのゲスト、特に体が大きな方から、窮屈だというご意見をいただいたことがあります。アロマもその一つです。僕たちが良い香りと思っても、誰もがそうは思わない。国籍も文化も多種多様なゲストが訪れますので、そういった声には素直に耳を傾け、即座に対応しています。

こういった生の声は、人間対人間のコミュニケーションがあってこそ知りえる内容ですよね。ちなみに、サービスのなかには、「このシステムが使いたい」という考えから生まれたものもあると思うのですが。
基本はサービスありきで、そのために実現できるデバイスを探すケースがほとんどです。ただし、メーカーから「試験的に作っているデバイスを使ってほしい」という打診もあり、それがユニークなものであれば、どうやって組み込むかを考えたりもします。複数の会社さんのデバイスをつなげたらおもしろそうといった観点から探すケースもありますよ。
そうやって導入したデバイスをゲストが体験したデータを、各メーカーにフィードバックしているとも伺いました。&AND HOSTELは、パイロット市場としての役割も担っているんですね。

<宿泊階の廊下に設置されている、Phillips社のIoT照明 Philips Hue>

開発したものの、普及がともなっていないのでデータを取得できない。ゆえに改善に至らない、という悩みをお持ちのメーカーさんもいらっしゃいます。&AND HOSTELがそういった企業の試金石の場として役立てていることは嬉しいですね。

僕たちは、ファーストマーケティングプレイスの役割も担っていますので、色々な属性の方がそれぞれの立場から価値を感じていただきたいと思っています。

「宿泊自体を一つの観光として捉えてほしい」、宿泊にも体験が求められる時代に呼応

お部屋はシンプルなしつらえになっていますが、IoTに対応させていくうえでの工夫やこだわりがあれば、お聞かせください。
デバイスの多くは電源とつないでいますが、“スマートホステル”を謳っていながら配線がやたら見えていると格好悪いですよね(笑)。その辺りは神経を使いました。行き当たりばったりだとうまくいかないので、あらかじめ何をどこに置くのかのイメージを持ち、近くの壁に穴を空けて配線を落とすなど、そういった工夫をしています。

<配線などが見えず、スッキリとした印象の共用ラウンジ>

宿泊ゲストは、&AND HOSTELがスマートホステルだから選んでいるのか、宿泊したらスマートホステルだったのか、どちらのケースが多いですか。
同じくらいの割合でいらっしゃいます。ただし、スマートホステルだからと宿泊される方にも、一様に驚いていただいています。これは、イメージよりも実体験が勝っているからかと。まさに、百聞は一見にしかず。体験から生まれるインパクトは大きいな、と。

ゲストの様子や感想からは、ここで「休息」がしたいのではなく、「体験」がしたいというパラダイムシフトが起きていることをつぶさに感じます。消費がモノからコトへと移るなか、宿泊にも機能以上に体験が求められている印象を強く持っています

「&IoT」で提案する、”ITと暮らす”ちょっと先の未来

&AND HOSTELは、今後どのような展開をしていくのでしょうか。
当面は、東京オリンピックに向け、東京・大阪・福岡といった、インバウンド需要の高いエリアに出店していく予定です。大阪1号店も年内に開業する計画です。
今回は宿泊施設という点でお話を伺わせていただきましたが、御社として、今後さらに拡充していきたい事業分野はありますか?
当社が開発したアプリケーション『& IoT』を、さまざまなビジネスと連携させていきたいと考えています。その一つが現在、横浜市、株式会社NTTドコモと進めている『未来の家プロジェクト』です。こちらはトレーラーハウスのなかに IoT とAI(人工知能)を張り巡らせたもので、たとえばソファに搭載したセンサーが座るだけで心拍や血圧を測ってくれる、朝、洗面所に立つだけで自分の健康状態が鏡に表示される、寝ている間にベッドが呼吸を計測する等、IoTスマートホームの普及に向けた実証実験を進めています。

<未来の家プロジェクト室内のイメージ>

日々の生活のなかにIoTが自然と入り込んでいる、そんな世界が近づいていますね。
家電をはじめ、製品を選ぶ基準って「健康に寄与するのか」「経済的メリットはあるのか」、最近だと「地球環境に良いのか」といった視点が含まれています。これらは、現代人の価値観として分かりやすいですよね。IoT も今後、これらの視点で普及していくと考えています。

IoTの活用が主流になるであろう未来に向けて、毎日が、より便利に、より豊かに、そしてちょっとワクワクする、そんなサービスが提供できるよう、当社も引き続き取り組んでいきたいです。

編集後記

いかがでしたか。わたしもゲストルームを体験してきましたが、デバイスが動くたび、ついアッと声をあげてしまいました。まさに、茶置さんの話す『百聞は一見にしかず』を、実感した瞬間でした。

現代は、IoTがその片鱗を見せるたび、世の中がザワザワとしていますが、来たる未来にはこれが普通の感覚になるのでしょうか。人類は今も、めまぐるしい速さで進歩しているんですね。

&AND HOSTELが提案する、ちょっと未来の暮らし。興味を持たれた方は、次回の旅行の宿泊先に、&AND HOSTELを選んでみてはいかがでしょうか。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人
香川妙美
香川妙美 山口県生まれ。音楽業界での就業を経て、2005年より自動車関連企業にて広報に従事。2013年、フリーランスに転身。カフェガイドムックの企画・執筆を振り出しに、現在までライターとして活動。学習情報メディア、広告系メディア等で執筆するほか、広報・PRの知見を活かし、各種レポートやプレスリリース、報道基礎資料の作成も手掛ける。IT企業・スタートアップ企業を対象とした、広報アドバイザーとしても活動中。