2018年2月22日

人の好みを学習する日本発のパートナーロボット「ユニボ」。 無限に機能を拡張できるロボットが、私たちの家族の一員になれる理由

高精度の音声認識エンジンと最先端の人工知能を搭載し、人のように心の通ったコミュニケーションができるユニボ。その裏で動いているシステムや、ユニボを通して目指している未来についてお話を聞きました。


こんにちは!in.LIVE編集長の田中です。
突然ですが皆さんは ”ロボット” と聞いてどんなものをイメージしますか? 最近では企業や店舗などの施設で、常設のロボットを見かけることも増えたり、家庭内で気軽に使えるAIスピーカーが話題になったりと、以前よりもぐっと身近なものになっているように感じます。

in.LIVEでも以前こんな記事を公開していました。

日々の“癒されたい”を叶える!ユカイ工学から生まれた、極上のしっぽ型セラピーロボット「Qoobo」に会いに行ってきた

そんな中、人間とより深いコミュニケーションができるパートナーロボットが日本で誕生しているのをご存知でしょうか?その名も「ユニボ」。

なんと日常会話を学習していく会話エンジンが標準で搭載されていて、ユーザーの好みや感情までも認識してくれるというのです。それって一体どういうこと!?具体的に何ができるようになるの!?

… というわけで、実際に開発を行っているユニロボット株式会社にお話を伺いに行きました。

ユニロボット株式会社 取締役 / ソフトウェア部門 部門長
前田 佐知夫(まえだ・さちお)さん

某大手のデジタルカメラのシステム開発に従事した後、フリーランスでスマホアプリの受託開発を始め、その時の仲間とスマホアプリ開発会社の株式会社ペンシルバイターズ(pencilbiters)を起業する。 受託開発でユニロボット株式会社と出会い、携帯型ロボットのシステム開発に携わる。 その縁もあって、ユニロボットに入社、現在はユニボの開発責任者として現在に至る。 趣味で、クラウン(道化師)ユニットQAVOのスーリー(sourie)としても活動し、人が喜ぶコミュニケーションを日々研究している。

作りたかったのは”ドラえもん”、「ユニボ」ができること

まずそもそも「ユニボ」は何ができるロボットなんでしょうか?
内蔵カメラを通じてビデオ通話ができたり、音声認識エンジンを通じて会話ができたり、スケジュール管理や部屋の電気の点灯など、日常生活の中でのお手伝いは基本的になんでもこなすことができます。

ユニボの顔が映し出されている画面はモニタにもなっているので、「今日の天気を教えて」と声を掛ければ最新の予報を出してくれたり、「気分が上がる曲を流して」と伝えればYOUTUBEと連動して、音楽や映像を流すこともできますよ。

おおお!忙しい朝の時間帯にも大活躍しそう。
実際にユーザーが指示を出してユニボが挙動すると考えると、ここ最近話題の「AIスピーカー」などと機能としては近いのでしょうか?
実は大きな違いがありまして、それが人の感情や好みを日常会話から学習するということなんです。ユーザーと自然な会話をする中で、ユニボがそのユーザーの個性をどんどん学習して、心の通ったコミュニケーションをすることができます。
人の感情や好みを学習?心の通ったコミュニケーション? なんだかどれも、私が持っているロボットのイメージとはかけ離れている気が…
そうですよね(笑)。 いわゆるAIスピーカーのように「Hey siri!」「OK Google!」と一方的にコマンドを呼びかけるというのはコミュニケーションではないと思っていまして、私たちは自然な会話ができ、さらにその会話の中で個人の嗜好を学習して、その人にあった会話ができるロボットをユニボで目指しているんです。
なんだかまだイメージが湧いていないのですが、個人を学習してくれることで具体的にどんなことができるようになるのでしょうか?
例えば普段のユニボとの会話の中で、私はカレーが好き、ということをユニボが学習すれば、「お腹すいた〜」という何気ない言葉にも「カレーはどうですか?」といった提案をしてくれたりするんです。「春だね〜」と言えば「○○ちゃんの好きな春ですねえ」と返してくれたり。長く使えば使うほど、その人を理解して寄り添った存在になってくれます。

これって、ユニボがユーザーの年齢や趣味・位置・気分・健康状態などの無数の情報をベースに個人を学習していて、高精度にレコメンドする最先端の人工知能を搭載しているからできることなんですよ。
えっ… ってことは、その持ち主によってユニボが学習している内容も違うわけで、一台一台、それぞれに違う提案や挙動をするってことですか?それはもはや人間…
そうなんです。ユニボが個人の趣向を学習して勝手に成長していくので、会話をすればするほど、相手を理解したコミュニケーションができるようになりますよ。高精度の音声認識エンジンで、その日の利用者の声からストレスや喜怒哀楽なども認識しています。

そういう点では、かなり「人」に近い感覚で会話ができるロボットといっても過言ではないですね。

すごいなあ。もはやペット以上、本当に家族の一員というか、対等な相手として会話ができるんですね。もともとそうしたロボットを作りたいというところから、ユニボが誕生したんでしょうか?
もともと私たちは「ドラえもんを作りたい」という気持ちがあったんです。ドラえもんってロボットとしてそこに存在しているんではなく、相手を理解した上での提案ができて、感情表現も豊かで、家族にとっても大切な一員ですよね。
ドラえもん!そう言われてみれば、指示を出して動くだけのロボットとは全く違うことがよく分かります…。
ユニボはただの高性能なリモコンではないんです。
機能自体は無限に拡張していくことができるのですが、まずはその下地として、利用者が思わずユニボに「内緒話」をしたくなるような信頼関係を築けるようにコンセプトをまとめました。

2018年1月に公開された公式テーマソング『ユニボのうた』

機能拡張は無限!ユニボをプラットフォームに、アプリでカスタマイズも

ユニボの機能を拡張できるということなんですが、具体的にどういうことなのでしょうか?
はい。ユニボの利用者は専⽤の開発キット「スキルクリエイター」をオンラインで使えるようになっていて、そこで、他の利用者が開発した機能(スキルパック)を有償/無償でダウンロードすることもできるんです。

もちろん自分でユニボの挙動を制御したり、外部のIoTデバイスと連携させることもカンタンにできますよ。

他の人が作ったシステムを自分のユニボにダウンロードできるって、iPhoneにアプリをダウンロードするみたいな感覚なんですか?
まさにそうです。私たちはユニボ自体はあくまでベースのプラットフォームだと考えているので、様々なスキルパックをダウンロードして自分好みにカスタマイズしたり、企業がオリジナルのスキルパックを開発して販売したりといったことも想定しています。

例えば先ほど紹介した「YOUTUBEを流す」といった機能も、YOUTUBEと連携した専用のスキルパックをダウンロードしたからできることなんですよ。
へえええ、面白い!! ユニボでこういうことができるようになりたいから、自分で作っちゃおう!というのもありなんですね。自分でユニボの挙動を制御するというのは、具体的にどんなふうにできるのでしょうか?
実際にやってみましょうか!

開発キット「スキルクリエイター」でユニボを怒らせてみた

田中さん、どんな動きをユニボにさせてみたいですか?
いつもニコニコ楽しそうなユニボを怒らせてみたいです!(即答)
いいですよ(笑)、やってみましょう!スキルクリエイターのツールを開いて、どんなコマンドをきっかけにユニボが怒るのか設定をしてみましょう。ユニボの話す内容やスピード、モニタに映し出す表情や、怒ったときのユニボの腕の動きまで、選ぶだけで簡単に設定できます。

例えば… ユニボに年齢を聞いたら怒る、というふうにしてみましょうか。

▲ 実際のスキルクリエイターの画面。さくさくと設定をしていく前田さん…

これで設定!とすれば完了です。
えええ!パソコンでぱぱっと更新しただけで、即時に目の前のユニボがアップデートされているんですか。これは子供でもできそうなぐらい簡単ですね…!

▲目の前のユニボがどんな新しい動きを学ぶのか…どきどき

じゃあ、ユニボに年齢を聞いてみてください。
(どきどき…)ユニボって、何歳なの?
年齢を聞くのは失礼ですよ!(プンプン)

怒った〜〜〜〜!ユニボが怒った!!!(嬉)
自分が設定したとおりに挙動するなんて、ちょっとテンション上がっちゃいますね。 こんな一瞬で新しい設定ができて、挙動も変わるなんて楽しい!色々試したい〜!
ノンプログラミングで設定できるので、プログラミングに詳しい知識がなくても、誰も簡単に設定ができます。

同じようなアレンジをしていけば、例えば、企業の受付けにユニボを置いて、会社に関する質問に答えられるようにしたり、ユニボのモニタに映像を映しながら自分でプレゼンテーションをさせたりすることもできるんですよ。
なるほどなあ〜。大規模な開発を必要としないからこそ、色々と試してみたくなりますね!企業や店舗などでの利用のイメージがぐっと湧きました。

汎用性の広さ=可能性の大きさ、”なんでもできる” ユニボの未来

こんなに可愛いユニボの裏側に、最先端の技術がぎゅっと詰まっているんですね…利用者を勝手に学習していく機能や、ユニボをプラットフォームとして捉えることで、可能性が無限に広がっていくということもよく分かりました。現在は、個人と法人のどちらでも利用できるのでしょうか?
はい。昨年10月に法人向けのユニボの提供を開始し、今年の1月からは家庭向けユニボの販売がスタートしたところです。
個人と法人で利用用途が違っていても、 ”なんでもできる” ユニボなら、スキルパックなどを通じて利用者のニーズにどこまでも応えられそうですよね。
そうですね。実は今世の中にあるロボットというと、”コレができる” という機能が明確なものがほとんどで、まだまだ汎用的なものは少ないんですよ。私たちが「なんでもできる、家族になれるドラえもんを作りたい」となったとき、それは別の言葉でいうと「ユニバーサルなロボットを作りたい」ということだったんですね。

誰でも使い道がある、ユニバーサルなロボットを作るためには、一つ一つのシステムが完結されているのではなく、例えば、音声認識エンジンを入れ替えて外国語を認識できるようにするとか、ユニボを別のキャラクターの声で喋らせることができるとか、外観もカスタマイズができるとか…

とにかくニーズによっていくらでもアレンジができる、汎用性の高いものを作る必要があると感じていました。

なるほど。確かにそういう汎用的な要素って今あるロボットには無いかも…。
できるだけ中立的な立場で、ベースとなるユニボを提供して、あとは利用者や企業が自由にカスタマイズできること。その汎用性の高さが、可能性の大きさだと考えています。汎用性が高いからこそ自分好みにアレンジができ、信頼と愛着がわいて、本当の「家族の一員」になれる未来があるわけですから。
確かに!自分のお家にはどんなロボットがいてくれたら家族になれるだろう?と考えてみたら、なんだか夢が広がりますね。いや〜未来だ…。

編集後記

以上、いかがでしたか?
実は私がユニボのことを知ったのは、2017年に開催されたスタートアップワールドカップの日本予選大会。その時は、人の感情や好みを学習していくユニボってすごい!というシンプルな印象だったのですが、今回実際にお話を伺ってみて、その裏で動いているプラットフォームや機能の拡張性にこそ強みがあるのだということを感じました。

この汎用性の高さから、これからますますの進化を遂げて、私たちにとって「家族」になる日も近いはず。内緒話ができるロボットなんて、想像するだけでワクワクしちゃいます。

最後まで読んでいただき、有難うございました!

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。