2017年9月29日

【対談】アイデアのはじまりは目覚まし時計!?『MESH』
プロジェクトリーダーに聞く、IoTが一般化するために必要なこと

「MESH」を実際に体験させていただいた前編に続き、後編では「MESH」の開発秘話からIoT製品がもたらす未来について、アステリアR&Dセンター長・田村を聞き手に、MESHの生みの親でもある萩原氏との対談形式でお伺いしました。


こんにちは! in.LIVE編集部の石川です。
「こんな〇〇があったらいいな」という日常の小さなアイデアがノンプログラミングで実現可能になるアイテムである『MESH』。今回は「身近な「あったらいいな」を実現可能に!誰でもカンタンにIoTのしかけが簡単につくれる『MESH』を使ってみた」に続き、MESHがどんな背景で生まれたのか?という開発秘話や、MESHのようなIoT製品がどんな未来をもたらすのか?についてお話をお伺いしました。

アステリアR&Dセンター センター長を務める田村を聞き手に、MESH製品のプロジェクトリーダーを務めるソニー株式会社の萩原氏との対談形式でお送りします。

萩原丈博(はぎわら・たけひろ)さん
ソニー株式会社 新規事業創出部 I事業室 統括課長

学生時代、コンピュータサイエンスとアート、デザインに関する分野で活動。2003年ソニー株式会社入社。So-net(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)などでネットワークサービスの企画・開発に従事。2011年-2012年、スタンフォード大学訪問研究員。米国・西海岸シリコンバレーでの滞在経験を経て、2012年に社内スタートアップMESHプロジェクトをスタート。MESHはMake、Experience、Shareの略で、プログラミングや電子工作の知識がなくても誰でも簡単に楽しく「あったらいいな」を形にできる世界を目指している。

聞き手:田村健(たむら・けん)
アステリア株式会社 東京R&Dセンター センター長 兼 IoT Future Lab所長

1993年、大手電機メーカーに入社し、グループウェアやワークフローなどのパッケージ製品開発に携わる。2000年にアステリア株式会社に入社後、初期からデータ連携パッケージ製品ASTERIAシリーズの開発に携わり、ASTERIA 3、ASTERIA WARPの開発責任者としてチームを率いる。現在は、東京R&Dセンターのセンター長として、ASTERIA WARPはもちろん、PlatioやGravioといったIoT関連製品、ブロックチェーン関連のプロジェクトにも携っている。また、2016年に開設されたIoT Future Lab.の所長としても活動している。

MESHアイデアのきっかけはめざまし時計…!?

今日は宜しくお願いします。MESH、面白いですよね。あったらいいなと思うアイデアを形にできるとのことですが、萩原さんも具体的な原体験があったのでしょうか。MESHのアイデアが思い浮かんだときのお話をお伺いできますか。
はい、実はこのMESHのアイデアを思いついたきっかけは「めざまし時計」なんです。
めざまし時計…?
ちょっと想像してみてください。めざまし時計のスヌーズボタンって時計についているのが当たり前ですが、もしこのボタンを洗面所に設置することができたら、枕元で音がなっても、洗面所まで行かないとめざまし時計が止められないじゃないですか。そうすれば、そのまま洗面所で顔を洗って、朝起きるのがもっとスムーズになるだろうと(笑)。
なるほど…!たしかに、それはありそうでなかったものですね。
そうなんです。実際に探してもそういったものは販売されていなくて、作ろうとしても電子工作で無線が必要だったり難易度が高かったんですよ。

同じように、家の中にあったらいいなと思えることが簡単にカタチにできるツールがあれば、もっと色々なものに活用できるのでは?と思ったのがMESHのはじまりなんです。当時2012年頃は、ソフトウェアのエンジニアをしていた頃でしたね。
目覚まし時計を作ろう、ではなく、そういったアイデアを実現できる「ツール」そのものを作ろうとされたところが面白いポイントだなと感じます。萩原さんはもともとソフトウェアのエンジニアとのことですが、IoTの分野ってハードウェアの知識も求められますよね。
そうなんです。IoTの分野はソフトウェアとハードウェアの両方の知識が必要になるので、ハードウェアを試作するところでまずは苦労しましたね。こちらの表で、最初に試作をしてから商品化するまでの歴史をまとめています。
最初はこんなのがあったらいいなと思うものを紙で作り、試作を重ねていき徐々にIoT製品に近づけていきました。はじめは大事なデモのときに配線が切れていたり、ハードウェアならではの苦労が絶えなかったです(笑)。
私自身もここ数年IoTの関連のプロジェクトをやっていますが、元々ソフトウェアのエンジニアなので、はじめはハードウェアのことが全然わからず苦労しました(笑)。
それにMESHの製品を見て思うのですが、ハード面のデザインやパッケージがとてもカラフルで素敵ですよね!こちらはどのようなこだわりがあるのでしょうか。
MESHは単独で使用するものではなく、何かと一緒に付けたり、中に組み込んだりして使うものを想定していたので、複雑な形状ではなくあえてシンプルな形状にしようと、この形にたどり着きましたね。
具体的には電子タグは全て角張った直方体で同じサイズに統一しています。これは、インチサイズをベースにおおよその大きさを決め、そこからレゴにも対応できるミリメートル単位をベースにしたサイズにしました。人が使いやすいサイズを色々と検討した結果、この大きさに落ち着きました。
例えばこれはMESHを組み込んだスタッフ呼び出しボタンですが、MESHの形状であれば複雑な形状にカットする必要もなく、簡単に中に組み込めるんですよ。
なるほど!確かに、他のものと組み合わされることを前提にデザインされているのは有り難いですね。色などにもこだわりがあるのでしょうか?
インプットのセンサーは青などの寒色系、アウトプットのセンサーは暖色系としています。また、ワークショップなどで使って頂く利用用途も想定して、全体のパッケージは、使ったあとにきれいにしまいたくなるようなものを意識しましたね。

IoTが一般化するために必要なのは「技術力」よりも「発想力」

実は弊社のイフラボ(アステリア本社の1Fフロアを使って展開しているIoT機器が体験できるスペース「IoT Future Lab.」通称イフラボ)でもMESHを設置をさせていただいているのですが、知らない間にみなさん自由な発想でいろいろ作られていて、とても人気なんですよ!
MESHの登場により、プログラミングをできない人でも、発想次第でいろんなIoTの恩恵を受けることが可能になったように感じます。ただ一方で、MESHのような使いやすいツールがあってもなかなか活用できない人も多いように思います。今後IoTがより一般化していくなかで、IoTをうまく活用するために重要なのは「技術力」より「発想力」なのでしょうか?
そうですね。わたしたちもワークショップを開催するときに気をつけているのですが、このMESHのタグをを見ただけでは、アイデアは出てこないんですよ。

なので、一通り使い方を説明したあとに、一旦MESHのことは忘れてもらい、身の回りのあったらいいなと思うものを探しましょう!とアイデアを探す時間を設けるようにしています。

そうすると、「この自動ドアに1日に何人くらいの人が来ているかを知りたい」とか「ここの受付には人がいないから、誰か人が来たときに通知が来るようにしたい」とか、日常生活の中での課題やアイデアが見えてくるんです。
技術を使って何をしよう?ではなく、身近な生活の中で困っていることやあったらいいなと思うことをどう実現しよう?と考えたときに「MESHがあれば解決できる!」ということですね。つまり、大事なのは解決したい目的があるかということでしょうか。
そうなんです。今まではその課題があっても、解決する方法を知らなかったので、自然とあきらめていたことが多いと思うんです。目的があってそれを解決するための手段として考えていただければ、MESHを使用するシーンも増えるのではと思っています。

少し大げさかもしれませんが、「MESHを使えば解決できそう!」という意識のアンテナを日常生活の中で張ることで、身の回りの見え方も変わってくるのではないのでしょうか。

カジュアルな使い方から業務用途まで活用方法は無限

MESHは主婦の方が家の中でちょっと使ってみたり、一般の方がカジュアルに生活の一部として使用されることも想定しているということですね。今後のビジョンとしては、どのような分野や場面で使われてほしいとお考えでしょうか。
はい、大きくふたつあるのですが、ひとつは「教育の分野」です。
若年層のプログラミング教育や、大学生や社会人が、新しいアイデアを形にして整理できるツールとして使用していただきたいと思っています。

たとえば小学校の授業だと、課題について調べて模造紙で発表する、というような機会ってよくあると思うんです。仮にそこでゴミ問題についての課題を発表する場合、「実際にゴミの分別をきちんとするための方法を考えました!」とMESHでアイデアを具現化することも可能になります。
ゴミ箱に人感センサーを付けたり?(笑)
そうそう。人がゴミ箱に近づくと「それは燃えるゴミですか?」とゴミ箱が語りだしたり。これは、ある小学校の授業で、実際に生徒の方によってMESHを使って発表された内容なのです。

IoTという言葉を使わなくても、アイデアを具現化でき、楽しんで学ぶことができるようになったら自分たちが技術を使って、本当に課題を解決できるんだという実感も湧きますよね。
それからもうひとつは、「ビジネスの現場」で使用できるというところですね。
例えば、今MESHはスマホやタブレット上で実現したいしくみを設定する仕様になっていますが、常に使うモノに対し、しくみを設定するとなると、これらの端末をどこかへ置きっぱなしにする必要があります。

そこでこのタブレットを小さなハブのようなものに変換し、常に稼働し続けられるようにしていく予定です。現場のニーズに合わせて、現場の方が利用できるように、日常的なツールとして使用していただけるよう、業務サービスとの提携を進めています。
MESHとその他のサービスが組み合わさることで、カジュアルな使い方から業務用途まで、活用方法の幅がますます広がっていきそうですね!
これからも私たちだけで活用方法を提案するのではなく、実際に使ってくださるお客さまと一緒に使い方を増やしていきたいですね。現在MESHのサイトでも活用事例を200ほど紹介していますが、コンテストでアイデアを集めたりしながら、今後はもっとお客さま同士でのコミュニケーションがしやすくなるように広げたいと思っています。
すでに200も事例が…!すごい数字ですね。
先ほど、教育分野にも力を入れるとのことでしたが、小さい頃からMESHのようなツールやハードウェアを気軽に使えるって世代って羨ましく思ってしまいます(笑)。
そうですよね。しかも子どもたちは発想が柔軟ですし、そのアイデアに驚かされることもあります。IoTという言葉を使わなくても物心がついたときには、IoTの基本を自然と理解し、いつの間にかセンサーを使ってプログラミングができているようなIoTネイティブ世代ですね。

そういった意味でも、今後IoTをうまく活用するには、プログラムをじっくり考えてから作るのではなく、考えることと作ることを同時に進め、作りながら考え、考えながら作る工程も重要かもしれませんね。

【対談】「MESH」プロジェクトリーダーに聞いてみた!まとめ

以上、いかがでしたでしょうか。今回は、前編と後編の2回にわけてMESHを実際に体験させていただき、MESH製品のプロジェクトリーダーを務める萩原氏より開発秘話やIoT製品がもたらす未来についてお伺いしてきました。

ITの技術や知識がないと、アイデアが浮かばない…のではなく、もし〇〇があったら…!と日頃からアンテナを張ることで、より暮らしやすい未来が待っているのではないでしょうか。今後、日常に潜んでいる課題を解決するために、MESHのようなIoTツールを使う人々が増え、IoTが当たり前のように身近にある日も近いのではないかと思いました。

カジュアルからビジネスまで、今後もますます活用の幅を広げる『MESH』に今後もご注目ください!最後までお読みいただき、ありがとうございました。


「Creative Lounge」


今回はソニー本社ビルの1階にある「Creative Lounge」にてお話をお伺いしました。デスクや黒板、3Dプリンタなどの電子工作用の機材が並び、ソニーの関係者や社員の紹介者であれば自由に利用ができるメイカースペース。ここでは、新規事業に向けたアイデアを自由に試作することができ、『MESH』などの既存の製品を体験することも可能です。


◎関連リンク

・MESH 製品サイト http://meshprj.com/jp/
・ソニーマーケティング株式会社 http://www.sony.jp/
・Creative Lounge   https://www.facebook.com/sapcreativelounge/

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この記事を書いた人
石川妙子 アステリア株式会社 広報・IR室。in.Live編集部。 大学卒業後、大手銀行にて勤務。その後、自由大学の運営を経て、2015年より世界一周の新婚旅行へ。帰国後は、編集者として活動。インバウンドや農業メディアにも所属。2018年より長野を拠点に移し、東京との二拠点生活中。