2017年10月18日

家具選びは「AR」でもっと楽しくなる! IT×インテリアが生んだ「RoomCo AR」が業界シェアを獲得するまで

皆さんは「インテリアの試着ができたらいいな」と思ったことはありませんか?そんな願いをARを使って叶えてくれるサービスを開発する、リビングスタイル社の井上社長にお話を伺ってきました。


こんにちは!in.LIVE編集長の田中です。
突然ですが、皆さんインテリアを買うときに重視することってなんですか?

サイズ、カラー、デザイン、機能、使い心地… こうしたポイントはもちろん、ほかの家具とのマッチ具合も気になりますよね。 決して安い買い物ではないインテリア。それにも関わらず、洋服を買うときのように試着ができないなんて!と思ったことはありませんか?

実は今、そんな「あったらいいな」と思うサービスがAR(拡張現実)と呼ばれる技術を使って、すごい進化を遂げているんです!その実態を知るべく、現在「無印良品」や「Francfranc」など人気ブランドでも続々導入されている株式会社リビングスタイルの井上社長にお話を伺いました。


井上俊宏(いのうえ・としひろ)さん
株式会社リビングスタイル 代表取締役

日立製作所にて研究開発部門、日本ベリサインにて営業・マーケティング部門を経て、2007年に、株式会社リビングスタイルを創業。自身の体験から、独自のサービスとビジネスモデルを構築し、AR/VR技術を中心に日本におけるインテリア業界のプラットフォームサービスを展開中。

全商品の写真を撮影してデータ化!インテリアの3Dシミュレーターが出来るまで


今日はよろしくお願いします!早速ですが、ここ、すごく素敵な場所ですね!
実はここ「Re:CENO」さんは、僕らのサービスである3Dシミュレーターを導入してくれているインテリアショップなんです。お店で気に入った家具やインテリアがあれば、実際にシミュレーターを使ってコーディネートや配置などを無料でアドバイスしてくれるんですよ。

すごい!お店のアイテムを自由に選びながらシミュレーションしてくれるんですね。
購入して部屋に配置してからイメージと違う!なんてこともなくなるし、コーディネートをプロにアドバイスしてもらえるなんて、めちゃくちゃ有り難い…!

そもそもこの3Dシミュレーターは、もともと社長の「こんなサービスがあったらいいな」という発想で誕生したと聞きました。
そうなんです。昔「自由設計」のマンションに引っ越す機会があったのですが、そのときに家具の配置や購入にすごく困ったんですよね。

どの場所に何を置いたらどういう空間ができて、どんな全体感になるのか?毎回設計士に依頼して図面を作ってもらって…と、なかなか大変なやり取りで。これがもっとオンラインで手軽にできればと感じていました。
確かに、世の中にはこれだけ色々なサービスがあるのに、そうしたツールが無かったなんてちょっと意外なくらいです!
僕も「だれか作ってくれないかな?」なんて思いながら、1〜2年が過ぎていて。だったら自分でつくろうと思って株式会社リビングスタイルを立ち上げたのが、2007年のことです。
無いなら自分で作っちゃおう!という行動力が凄いですね…
もともと井上さんはインテリア業界に関わりがあったのですか?
いえ、全くありませんでした(笑)。
なので、最初は本当にゼロからのスタートでしたよ。全国のインテリアのブランドやメーカーの代表電話に飛び込みで連絡して、まずはヒアリングをさせてほしいということでお願いをしたり…

おおお… めちゃめちゃ泥臭い…!実際にヒアリングをされる中で、ビジネスとして「いける! 」という手応えはあったのでしょうか?
そうですね。実際にヒアリングをしていると、そうしたWEB 3Dの技術を活かしたサービスがあれば是非使いたいという家具メーカーが沢山あることに気付いたんです。当時はまだそうした技術も出始めたところだったので、興味を持ってはもらえました。 そこで今度は、WEB 3Dの技術を持っている会社を探して、サービスのリリースに向けて動き出しました。

ただ、実際にリリースにたどり着くまでは大変なことだらけで。
まず、そもそも家具は工業製品と違って3Dデータを持っていないので、僕らが実際にお店に行って、ひとつひとつの家具を写真に撮って3Dに起こすという作業から始めました。もちろん3Dなので360度すべての角度からの撮影が必要で… これが大変でしたね(笑)。

家具ひとつひとつを撮影…!家具って色違いのアイテムやシーズンで入れ替わるものもあるし、話を聞いているだけで挫けそう…

必要最低限のアイテムだけ作ってリリース、というスタートではなかったのですね。
はい、実はそこが二つ目に苦労したポイントなんです。
こうしたシミュレーターを導入してみようと本社の方で話が決まっても、実際に利用するのは家具を販売している店舗のスタッフさんたちですよね。お客さんにシミュレーターを使って商品を提案する際に、そもそもすべてのアイテムがシミュレーター上にないと、それだけで接客にも支障が出てしまいます。

なのでリリースする際には、最初から全アイテムのデータを揃えておく必要や、お客さまの要望に応えられるサービスの完成度が求められました。よくWEBサービスにあるような「ベータ版」でのリリースはしませんでしたね。
なるほど… 確かにアレがないコレがないとなると、店舗スタッフの方は非常に使いづらいですね。
そうなんです。サービス導入後に現場でしっかり使っていただく、そしてお客さまの購買につなげていただくことが大前提なので、実際に3Dシミュレーターを使った接客の研修なども僕らが行っているんですよ。
店舗スタッフさん向けの研修まで!すごい!
そうした積み重ねが、業界シェアNo.1を獲得されている所以なんですね。

家具を配置できるアプリ「RoomCo AR」を試してみた!

創業時はこうした店舗向けのシミュレーターから始まったとのことなのですが、一般消費者向けのサービスの開発も当時から想定されていたのでしょうか?
はい。やはりtoB向けだと一つのメーカーやブランドの家具で統一されることが前提になります。でも実際の消費者の方からすれば、自分の部屋のインテリアは色々なメーカーやブランドのアイテムが組み合わされているのが一般的ですよね。

そこで、約20のブランドやメーカーのインテリアを自由に自分の部屋に配置できるシミュレーションアプリ「RoomCo AR(ルムコエーアール)」を2016年にリリースしました。
「RoomCo AR」ではスマホのカメラ機能とAR(拡張現実)技術をを利用して、自分の部屋に実際にインテリアを配置してみることができるんですよね。
そうなんです。実際にやってみましょうか!

例えば、今私たちがいるこの空間にソファを設置してみるとします。アプリ上で欲しいインテリアを選択して、こんな風に配置したい場所をカメラを通じて設定すると…

おおおお〜!!
何もないところに、ソファが出現しました!!

実際にカメラを持ったままこのソファのある場所に近づくと生地や素材の質感までよく見えますし、離れると、部屋全体のなかのサイズ感が分かるので、他の家具とのバランスも分かります。
実際の空間にはないソファがスマホの画面に映る空間にはあるって… 面白い! 自分の部屋で、理想のインテリアに囲まれている生活がイメージ出来ちゃうんですね。

こんなにカンタンなら、ちょっと横にずらしてみたり、向きを変えてみたり、色々試してみたい!

そうそう、僕が欲しかったのはまさにこれなんですよ。
実はこれまで家具のシミュレーションでは大きさや高さを測るための基準となる”マーカー”というものを配置する必要があったのですが、今年9月に拡張現実のためのフレームワーク「ARKit」がアップルからリリースされたおかげで、こうしたマーカーも最新のバージョンでは必要なくなりました。

これからは画面をかざすだけで、もっとカンタンに家具配置のシミュレーションをすることができ、ますます便利に使えるようになっていますよ。
おおお… インテリアの種類もブランド別にたくさん選べて、これは本当に楽しい!
ちょっとこのコタツとか置いてみても良いですか!?(やり始めるとついつい夢中に…)

でた、コタツ!しかも布団の柄も自由に選べる!
こういうの一番テンション上がりますね(笑)!

買ってから部屋のイメージと違う!なんてこともないし、メジャー片手に部屋を歩き回ることもない。何より、模様替えやインテリア選びがますます楽しくなりますね。
ありがとうございます!
海外に比べるとどうしても限られた空間となってしまう日本の家では、サイズだけを基準にインテリアを選ぶということも少なくなかったと思うのですが、実際に「RoomCo AR」を通じて、もっと日本人が家具選びを楽しめるような文化をつくっていきたいですね。

せっかくなので「Re:CENO」で家具配置のシミュレーションも体験してみた!


さらに今回はせっかくなので、こちらのサービスを導入されている「Re:CENO」さんで、実際にスタッフの方が行われている家具配置のシミュレーションも体験させてもらいました。対応してくださったのは、店舗スタッフの江上さん。


普段からこうしたシミュレーターを使って接客されているんですか?
はい。お客さまのご自宅の間取りや壁、床の色なんかを聞きながら、そこにマッチするアイテムなどをアドバイスさせてもらっています。お店に来ることが難しい遠方のお客さまには、オンラインでヒアリングをさせていただいて、こちらから無料でレイアウトのイメージを提案したりすることもありますよ。
無料でそこまでやってもらえるなんてスゴい!
実際にそうしたやり取りがあることで、提案の幅も広がりますよね。
そうですね。
シミュレーターの操作も視覚的でカンタンですし、お客さんと一緒に相談しながらお部屋づくりができるので店舗スタッフも助かってます。
実はこういうお部屋づくりって、私とても苦手で…(汗)プロに任せたい!ということもあるので、自分の部屋にあわせた提案をしてもらえるのはすごく有り難いです….。
そうですよね。家具を買うって、決して安いお買い物ではないと思うので、こうしたツールがあるということをお客さまにも知っていただいた上で、どんどん気軽にご相談いただけたらと思います!

現在購入を検討中のダイニングテーブルについて、真面目に相談しはじめる田中…


目指すは家具を自動でリコメンド!
ARの延長線上にあるコンピュータビジョンの進化

今回実際に「RoomCo AR」や店舗で使える家具配置シミュレーターを利用してみて、そのきめ細やかな機能や利用者視点のサービスの完成度に驚かされました!「インテリアの試着」がこんなに簡単にできるなんて!とびっくりです。
ありがとうございます。もちろんこれからさらにサービスをブラッシュアップしていく予定ですので、どうぞご期待ください。
創業当時はまだ身近ではなかった「AR」や「WEB 3D」という技術を使ってここまで実用的なサービスを運営して来られた御社ですが、井上さんが今注目されている新しい技術ってあるんでしょうか?
そうですね。やはり「コンピュータビジョンの進化」ではないでしょうか。
ARの延長線とも言えますが。
コンピュータビジョン?
はい。要は今スマホについているカメラの性能そのものがさらに進化するということです。例えば「顔認証システム」も最近ではかなり普及してきたと思うのですが、コンピュータビジョンが進化することで、こんな風にカメラが人の目のように機能していくと思うんです。

そうなると、例えばカメラを自分の部屋でかざすだけでおすすめのインテリアがリコメンドされたり、AI(人工知能)など他の技術と組み合わさることで更に機能が充実してきますよね。
なるほど!確かに、他の家具とのバランスが考えられたアイテムや、似たような部屋で人気のインテリアが自動で出てきたら、もっと模様替えも便利に楽しくなりそう!

あとは、インテリアだけじゃなく家電とかも出来たら面白そうですよね。
そうですね。実は今すでにパソコンのメーカーさんと一緒に、そのメーカーのパソコンをお部屋に置いたときのシミュレーションができるものもあるんです。ほかにも、人気の楽器メーカーさんのピアノを置いたりすることもできるようになっていますよ。

”インテリア” という枠組みだけにとらわれず、家電や観葉植物なども含めて、住まいを様々にトータルプロデュースできるようになれば面白いですよね。
確かに!身近な部屋の模様替えはもちろん、リフォームだとか壁紙の張替えだとか…もっとオンラインで気軽にできるようになることで、楽しみの幅も増えそうです。

お店でもお部屋でも、これからぜひ色々と使ってみたいと思います。本日はありがとうございました!

インテリアの試着ができる!「RoomCo AR」取材まとめ

以上、いかがでしたか?
今回株式会社リビングスタイルの井上社長にお話を伺って、「インテリアの試着」という新しい体験がここまで気軽に、そして完成度高く楽しめることに驚かされました。

ARやWEB 3Dという新しい技術をいちはやく実用的なサービスに落とし込まれたという点でも、これからさらにまた新しい技術を新機能として活かされることを期待せずにはいられません。


現在20のブランドと提携し、業界シェアNo.1を獲得されている株式会社リビングスタイル。 使うだけで模様替えやインテリアの購入がもっと楽しくなる、「RoomCo AR」は以下リンクよりダウンロードいただけます。皆さんもぜひ使ってみてくださいね!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


関連リンク

・株式会社リビングスタイル :https://www.livingstyle.co.jp
・RoomCo AR(iOS版 ダウンロード)https://itunes.apple.com/jp/app/id960938712
・RoomCO AR(Android版 ダウンロード)
https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.livingstyle.roomco
・家具とインテリアを楽しむための情報サイト: https://www.roomco.jp/

「Re:CENO TOKYO」

今回は二子玉川駅から徒歩5分の場所にあるインテリアショップ「Re:CENO TOKYO」にてお話をお伺いしました。

Re:CENO TOKYO
東京都世田谷区玉川3丁目9番3号 STREAM TAMAGAWA 2F
Tel 03-5797-2278/E-mail tokyo@receno.com
ACCESS / 東急田園都市線・大井町線「二子玉川」駅 徒歩5分

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この記事を書いた人
田中 伶 アステリア株式会社 コミュニケーション本部・メディアプランナー。 教育系のスタートアップでPRや法人向けの新規事業立ち上げを経験。話題のビジネス書や経営学書を初心者向けにやさしく紹介するオンラインサロンを約5年運営するなど、難しいことをやわらかく、平たく解説するのが得意。台湾情報ウェブメディア編集長も務める。