2017年3月6日

ブロックチェーン技術がもたらす新たな社会システムとは?野口悠紀雄教授が教えるブロックチェーンの価値

2016年12月15日(木)インフォテリア社長の平野が代表理事を務めるブロックチェーン推進協会(BCCC)主催の「BCCC Collaborative Day」が開催されました。その中で行われた、野口悠紀雄氏による基調講演をご紹介します。


2016年12月15日(木)インフォテリア社長の平野が代表理事を務めるブロックチェーン推進協会(BCCC)主催の「BCCC Collaborative Day」が開催されました(イベントレポートはこちら)。その中で行われた、野口悠紀雄氏による基調講演をご紹介します。

野口悠紀雄教授 プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。

〈主要著書〉
・「超」整理法―情報検索と発想の新システム 中公新書、中央公論社(1993)
・仮想通貨革命—ビットコインは始まりにすぎない ダイヤモンド社(2014)
・「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる ダイヤモンド社(2015)
・円安待望論の罠 日本経済新聞出版社(2016)
・話すだけで書ける究極の文章法 人工知能が助けてくれる 講談社(2016)
・ブロックチェーン革命 分散自律型社会の出現 日本経済新聞出版社(2017)

引用: 野口悠紀雄online

ブロックチェーン技術がもたらす新たな社会システム

ネット上で区別できない人間と犬

ネット上では『人間と犬』の区別がつかない、と言う話を皆さんはお聞きになった事があると思います。ネットは安価な回線を利用したデータのやり取りであり、何が正しいのかハッキリしない電子的なデータとも言えます。

そして、ネットで交信している相手はどこの誰だか分かりません。それは、「なりすました人間」かもしれないし、犬が運営しているWEBサイトがあるかもしれません。すなわち、人間と犬の区別がつきません。こうしたネット上の曖昧さは、1990年代にインターネットが登場した時に、雑誌「New Yorker」の漫画にインターネットを揶揄して描かれました。

 

起きていない<IT革命>

人間と犬を区別できないこうしたネットの曖昧さは「不安定なシステム」であり、インターネットが起こすと言われた「IT革命」を未だ起こしていません。インターネットが登場した1980~90年代に言われたことは、「社会/企業規模がフラット化する」ことです。

20世紀は「大企業」の支配する経済・社会—例えば「鉄鋼/製鉄産業」と「自動車産業」が垂直統合された大企業を生み出し、「組織」事態の肥大化も生む—でした。そして、IT革命はこれを逆転させ、変革させるものであったものの、それを実現しているとは言い難い状況です。

インターネットの登場により通信コストが低下することで取引コストも低下し、その結果、「大きな企業よりも素早く事業活動を展開する小さな企業」の方が優位となり、それに伴い組織もフラット化し、エンドユーザー間の公平な取引も成立する社会が登場するだろうと言われたものの、20数年後の今、それは実現していません。

現在のアメリカの産業構造を見ると、産業の主役が交代したものの、新たにハイテクの大手企業がリードする産業構造となっており、依然として大企業が経済の主体で、組織もフラット化していないし、世界全体もフラット化していません。

したがって、私は「IT/インターネット革命」と言う題目に裏切られ、騙されたという思いをもっています。


「何が正しいか」が分からない、インターネットの欠点

この起きていない革命の要因には、インターネットに欠点があるからです。その欠点は、「何が正しい」かを、証明できないからです。

「何が正しい」データであるかが分からなければ、どうなるのでしょうか?

何が正しいかわからないので、ある電子データが偽物である可能性もあります。その際に、どこに「信頼」を置くか。それは小さな企業よりも「大企業」の持つ信頼性・継続性にあります。やはり、大きいものは信用できる、小さいものは信頼できないとなると、組織の巨大化が重要になります。

つまり、現在のインターネットでは正しい信頼性を担保していないために、結果として、大企業への偏重がいまだに起こっています。くわえて、もうひとつの弱点は、経済的価値を送ることができない点にあります。 

今ではインターネットで送金や決済ができるものの、それは「無理にやっている」と言わざるを得ません。送金コストは2~4%の手数料が掛かり、SSL認証など本人・相手の認証にもコストが高いことが特徴です。したがって、送金コストが高く、信頼性にも問題があるというのが現在のインターネットです。

 ブロックチェーンの意味

こうしたインターネットの信頼およびコストの問題を解決したのが「ブロックチェーン」です。P2PネットワークとProof of Work(PoW)といった信頼性を担保できる仕組みを備え、UX・UIにも優れた面もあり、金融業務だけではなく、様々な用途にも利用することができます。

ブロックチェーン、主にパブリック・ブロックチェーンの意味・特徴をまとめると、

1)管理者が要らない
2)組織に頼らずに真正性を確保できる
3)コストが安い
4)(システム面での)強靭

と言うことができます。

ブロックチェーンの登場によりインターネットで実現できなかった管理者の不要、組織に頼らない信頼性が達成できるようになります。それは、90年代のインターネットの登場期に重なり、これでインターネットは完全に近づきます。

ブロックチェーンの社会的な普及には、回線網の整備、光回線Wi-Fiなどのインフラ・ストラクチャの面、法的等の制度的な壁の撤廃などの面の両面が整備されて行く必要があります。

パブリック・ブロックチェーンとプライベート・ブロックチェーン

ブロックチェーンには、「パブリック・ブロックチェーン」と「プライベート・ブロックチェーン」の2種類があります。タイプを分ける大きなポイントは、「管理者が存在するか、否か」です。

パブリック・ブロックチェーンは、正しいデータを担保することで、管理者が要らない分散社会、大企業の優位性の喪失、DAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)が主役となる社会を目指すものです。

一方、プライベート・ブロックチェーンは、現在の社会形態・金融事業形態をそのままに、コストの低下、システムの信頼性を高める事をブロックチェーンで実現しようとするものです。現在の社会形態をそのまま受け継ぐ反面、当初から「管理者の存在」、「組織に頼らない真正性の確保」を放棄したもので、「ファウスト博士の契約」をどう評価するか?とのテーマにも通じる問題になります。

そして、プライベート・ブロックチェーン、パブリック・ブロックチェーン、どちらを選択するかで、今後の社会・企業システムの在り方が大きく変わってくるでしょう。

通貨についての3つのシナリオ

通貨についてもブロックチェーンを利用する事で、いくつかの将来シナリオが考えられます。まずは、パブリック・ブロックチェーンを利用した、「ビットコイン型の仮想通貨」です。

2つ目は「銀行が発行する仮想通貨」であり、これはプライベート・ブロックチェーンの一つであり、銀行間でコンソーシアムを結成し、独自通貨を発行すると言うシナリオです。

3つ目は、「中央銀行が発行する仮想通貨」。中央銀行が発行する仮想通貨としては、既に、イングランド銀行や紙幣が利用されていないことを背景にスウェーデンの中央銀行が仮想通貨を発行しています。また、中国中央銀行も、この仮想通貨に強い関心を寄せています。

ブロックチェーンと仮想通貨がもたらす、将来の社会システムとは?

ブロックチェーンと仮想通貨がもたらす社会とは、どのような形態となるのでしょうか?

<図表-4:DAOと他の組織と関係についての概念整理 DAOの位置付け>では。

縦軸は「経営者の有無」、横軸は「労働者の有無」のマトリックスにして整理しています。経営者と労働者が存在する「伝統的な株式会社」の社会から、「AIによる完全自動会社」まで、4つの会社形態が考えられます。

ビットコインならびにパブリック・ブロックチェーンが実現する社会は、そのなかの「労働者がいる」社会ではあるものの、「経営者がいない」社会です。労働者はルーテインワークに拘泥される事は無く、人間が本来すべきである「労働」に従事し、経営者はビットコイン・プロトコルの中に収斂した社会、すなわち、DAO社会です。

くわえて、今後はDAC(Distributed Autonomous Company)が重要な位置付けとなります。
小さな組織による信頼性が担保されるため、金融機関は存在意味が無くなり、人間が本来すべき仕事および人間らしい労働を取り戻し、自立分散型の組織とそれを生かす社会システムへと変化していくことでしょう。

関連リンク

ブロックチェーン推進協会 公式サイト
野口悠紀雄氏 公式サイト
【イベントレポート】ブロックチェーン推進協会にて「BCCC Collaborative Day」を開催しました

この記事がよかったら「いいね!」
この記事を書いた人
in.LIVE 編集部
in.LIVE 編集部 インフォテリア株式会社が運営するオウンドメディア「in.LIVE(インライブ)」の編集部です。”人を感じるテクノロジー”をテーマに、最新の技術の裏側を様々な切り口でご紹介します。