2017年2月20日
ICTの活用など新たなテクノロジーが教育の現場でも重要視されています。今回は、東京工業大学がタブレットの活用を通じた面白い取り組みをされていると聞いて、実際に授業を受けてきました!
こんにちは!in.LIVE編集長の田中です。
皆さん突然ですが、大学の授業で居眠りをしてしまった!なんて経験はありませんか?
百人以上が着席する、先生の目もあまり届かない大教室、暖房の効いた暖かい部屋、先生のゆるやかな声のトーン… ましてやそれがお昼ごはんを食べたあとの午後一の授業となると… こんな経験、誰もが思い当たるのではないでしょうか?
しかしそんな逆境の中、「寝る子も起きる授業」を実践している先生がいるという噂を聞きつけました。一体どうやって?もしかして先生がめちゃくちゃ厳しいのでは…!?
その真相を探るために、東京工業大学にやってきました!まずは教授にお話を聞いてみます。
東京工業大学 工学院 教授、工学博士、FIEEE 電気電子系
千葉 明(ちば あきら)先生
・・・ というわけで、数年ぶりの大教室に着席しました!
ド文系な私、「制御工学」という学問との初めての出会いです… ドキドキ。
チャイムが鳴って、いよいよ授業が始まりました。
早速、前回の講義の宿題の解説を… と先生の前置きがあったかと思いきや、教壇の前に立ったのは先生ではなく、学生さん!?
プロジェクターに自身の答えを映して、杉元助教と一緒に「どうやってこの答えになったのか」などをマイクで他の学生さんたちに説明しています。
始まっていきなりの参加型の授業…!
あとで聞いてみると、どうやらこちらの学生さんはオンライン上で事前に提出された宿題の回答の中で、最も早く正しい回答をしていたのだそう。千葉先生の授業では毎回これが定番で、学生さん自身がほかの受講生たちに向かって、宿題の解説を行うスタイルなんだとか。
一通り解説を終えると「良い説明でした、ありがとう!」と学生さんと千葉先生が固い握手!
なんだか既に、想像していた大学の授業とは違うぞ…
その後も授業に入ると、こちらも黒板などは一切使わず、スクリーンにスライドを映し、そこに先生が直接画面上で手書きで書き込むというスタイル。
これは「MetaMoJi」というサービスを使っているそうで、板書やプリント配布などに比べて臨場感もあり、授業内での解説が圧倒的にスピードアップしたのだそう。
そして先生の解説がしばらく続き、さすがにそろそろ眠くなってくる学生さんも出てきたのでは… なんて思った瞬間!
チェックポイント試験!?
なんだなんだと見ていると、その合図を受けて、学生さんたちが一斉にガサガサと自身のスマホやタブレット、ノートパソコンをセットし始めました。
それぞれのデバイスの画面上に表示された問題に、学生さんたちがその場で答えています。もちろんワイワイするわけでもなく、一斉に集中した空気に包まれる教室。黙々とスマホに向き合っていますが、大学の授業でこんな光景を見るのは初めて!
一方その頃、学生さんたちから送信されたチェックポイント試験の回答は、授業に同席している研究室秘書の時岡さんのパソコンにリアルタイムで集約されていました。
これにはHandbook(※)というモバイル端末用のドキュメント共有アプリケーションが使われていて、この場で送信された回答に基づき、全受講生の回答率や正解率がその場で千葉先生にフィードバックされているのだそう…!
※Handbookとは?:
アステリア株式会社が開発しているモバイル端末向けのコンテンツ管理システム。 スマートフォン、タブレット、PCに向けて、資料やアンケートなどを同時配信することができる。千葉先生の授業では、配信先の利用者に向けて作成できる「クイズ」機能を利用して試験を作成。解答内容や解答時刻、正解/不正解がリアルタイムで管理者アカウントに届く。https://handbook.jp/
千葉先生も教室を見回りながら、学生さんたちがしっかり回答できているかをフォロー。
こ、これは・・・・ 寝ていられない!!!!!!!
このチェックポイント試験は、先生の解説を聞いていなければ答えられないような問題となっているそうで、この後も授業の中で、15分に一度、合計3回出題されました。
学生さんの解答の結果は、秘書さんの管理画面にて、自動的に集計・グラフ化され、PDFにて出力されているので、皆が理解したことを確認した上で次に進むという方式。
不正解者の多かった設問については、もう一度その場でじっくり解説するなど、学生さんたちの反応を見ながらの授業が行われていました。
もちろん教室を見渡してみても、皆さんかなり前のめり。
それぞれのデバイスを使って、真剣にチェックポイント試験に取り組んでいました。
そして授業の終盤、またも秘書の時岡さんが教壇に立ち、今度は授業のまとめを各自のデバイスから簡単にまとめて送るように指示。
さらに先週の授業の感想、アンケートとして、学生さんたちから寄せられたフィードバックを受講していた全員に共有します。 先生や授業へのリアルな評価が筒抜け!
しかも学期単位などではなく、毎回の授業でこうしたフィードバックが行われるなんて…こんな授業見たことないぞ…!そんなことを思っているうちに、あっという間に90分の授業が終了しました。
あれっ、90分ってこんなに早かったっけ…。
実際の授業が終わり、もう一度、先生に話を聞いてみました。
※ハッカソン(hackathon)とは?
広い意味でソフトウェアのエンジニアリングを指すハック(hack)と、マラソン(marathon)を組み合わせたIT業界発祥の造語。複数の参加チームが、マラソンのように限られた時間の中で開発に没頭し、アイデアや成果を競い合う開発イベントを指す。
以上、今回は東京工業大学の千葉明教授のご協力のもと、実際にタブレットを活用したアクティブラーニングの現場を体験させてもらいました。
ITの活用が教育の現場を変化させていることはもちろん、それを使う「人」という点でも、教授や助教授、研究室のメンバーたちが一丸となって挑戦や改善を繰り返し、より良くするために努力されていることが非常に印象的でした。
ITを作るのも人ですが、使うのも、もちろん人。
現場での課題解決のために様々なトライをされている教授や、そうした工夫によって変化していく学生さんの姿を見て、そんな当たり前のことを改めて思い出させられました。
お話を聞かせていただいた東京工業大学の皆さま、有難うございました!
・東京工業大学 工学院 電気電子系 公式サイト
・Handbook 製品サイト