ネットワーク型社会扶助は進展するか?

 本日の国会で、与野党全会一致でNPO法改正案が衆議院を通過しました。この法案は、これまであまりマスコミでは取り上げられてきませんでしたが、同じく審議中の寄付税制の改正とともに、日本社会における支援・扶助のありかたを少しずつ変えていくことになるのではないかと期待しています。


 日本には4万2千を超えるNPOがありますが、東日本大震災でも多くのNPOが直接・間接の復旧・復興支援を実施しています。一方、国会での報告によると約7割のNPOが財政問題を抱え活動の課題となっています。この背景には、欧米に比べると日本ではNPOなどへの直接の寄付が根付いていないことも一因として挙げられています。

 欧米では、例えば私たちのIT業界を見ても、Bill Gatesが多額の寄付をしたり、自らもNPO財団を作ったりと、政府とは別に特定の目的をもった社会的支援・扶助活動が盛んです。一方、日本では国が中心となった中央集権型の社会保障国家を作ってきました。税金を徴収して、富の配分をし、国民生活を保障しようとしてきました。しかし、社会そのものや人々の価値観が多様化する一方で国家の財政が逼迫する中、年金や社会保険の破綻を見るまでもなく、中央でお金を集めて中央が一様に分配するという方法は、限界に来ていると言わざるを得ません。

 支援・扶助する側も、何に使われるかわらないお金を出すよりも、自分が使って欲しい用途で使われる方が良いでしょう。使って欲しい用途と言っても、自分が被災地に行ったり、個別に送ったりということは難しいですから、一番近い方法としては、数多くのNPOの中から自分の考えや目的にあった活動をしているNPOを選ぶという方法があります。しかし、現在寄付による税金の減免措置が認定されているNPOは約200団体にすぎず、「認定NPO以外は怪しい」とすら言われる始末です。

 今回のNPO法改正と寄付税制改正が実現すれば、NPOの認定が国税庁長官から都道府県知事に移管され、地域の実情に応じて認定できるようになるとともに、仮認定制度により若いNPOにも寄付が集まりやすくなります。また認定団体への寄付も「所得控除」から「税額控除」(税金の額から直接引かれる)になるため、幅広い選択肢に対して寄付を行うハードルが大きく下がります。

 つまり、この改正が実現され、根付いて行けば、集めるも配るも中央集権型の社会保障制度ではない、新しいネットワーク型の社会扶助の仕組みが日本でも充実していく可能性があります。インターネットの普及により個人でも様々な情報が入手できる今の時代、全てお上の決めた通りではなく、自分の考えを反映させた社会貢献をしたいという人も少なくないでしょう。

 NPO法改正と寄付税制改正が、日本のネットワーク型社会扶助進展のきっかけになることを期待しています。


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