日別アーカイブ: 2018年6月7日

ブロックチェーンは改ざんされたのか?

先日、モナコインという仮想通貨で約1,000万円相当が、そしてBitcoin Goldという仮想通貨で約20億円相当が不正に引き出されたという報道がありました。そこで、ブロックチェーン推進協会(BCCC)では先週金曜日に、実際に何が起きたのかということとその技術的な解説を行う緊急説明会を行いました(写真)。ちなみに、これらの報道では「改ざんされないはずのブロックチェーンが改ざんされた」という解説がつけられているものがありましたが、まず結論からいうと、

ブロックチェーンは改ざんされていません。

今回のケースにおいても、ブロックチェーンはそのルール通りに正しく機能しており、当該交換所における取引確定に関する確認が不足していたということが今回の問題です。ですから、国内の交換所においても、ファイナリティー確認の回数(承認回数)を増やすという対応に出ているわけです。

問題は何だったかというと、以前から可能性を指摘されていた「51%攻撃」というものです。モナコインもBitcoin GoldもいずれもPoW(Proof of Work)という合意形成アルゴリズムを採用しており、確定前のブロックチェーンにおいて違いが生じた場合に、長いチェーンの方を採用するというルールになっています。

今回のケースでは、極めて大量のハッシュパワーをもつ悪意を持ったマイナー(採掘者)が、自らのコインを取引所に送金してさらに他の仮想通貨や法定通貨に交換した後に、その送金を含まない別のブロックを作りさらにそのハッシュパワーによって、より長いチェーンを作ったことで、モナコインやBitcoin Goldで定められたルールに則って、交換所に送られていない方のチェーンが採用された訳です。

よって、今回のアタックは「確定前」のブロックチェーンのデータの挙動を狙ったものであり、確定されたブロックチェーンが改ざんされたわけではないということです。

もちろん、これまでも「51%攻撃は事実上ありえない」とされてきたわけですから、今回の件は、仮想通貨界隈にとっては、大変な事件であることには変わりありません。しかし現実には、「51%攻撃は事実上ありえあい」というのは、十分にマイナーが多い仮想通貨のみに言えることです。たとえば、ビットコインであれば、51%以上のハッシュパワーを持つには今回盗まれたような金額とは桁違いの膨大な資金が必要であり、「現実的ではない」と言われて来ました。

しかし、昨今では、1000種類以上にも及ぶ仮想通貨が流通しており、有名な仮想通貨以外は総ハッシュパワーは桁違いに小さいわけです。ですから、有名な仮想通貨を採掘していたマイナーが、急遽あまり有名ではない仮想通貨にハッシュパワーを振り向けたとしたら、51%を超えるハッシュパワーを現実的に得ることが可能な状況となっています。

<結論>

  • ブロックチェーンが改ざんされたわけではない
  • 再発防止のためには、対処としては取引所の確定確認を十分に行う必要があり
  • (参加者が相対的に少ない)仮想通貨においてPoWだけでないファイナリティーを持つブロックチェーンの採用を検討する

もっと深く知りたいという方は、ぜひブロックチェーン推進協会の門を叩いてください。今回のような事件を含めて、ブロックチェーンの最新の話題や課題についてタイムリーに解説を行っています。