月別アーカイブ: 2017年10月

世界へ羽ばたけ!日本のスタートアップ

昨日、東京国際フォー-ラムで「Startup World Cup 2018」の日本代表を決める日本予選の決勝戦が開催されました。これは、世界中のスタートアップ企業がワールドチャンピオン(世界No.1)を目指して行う唯一の世界規模のコンペティションです。今回は前回の倍の規模となる世界32ヶ所(30ヶ国)もの地域で予選が行われますが、その1つが日本。日本では70社以上の応募の中から、10社が決勝にノミネートされました。そして、私はその審査員長を務めました。

決勝ピッチコンテストに残った日本代表候補は以下の10社ですが、あなたが知っている企業はあるでしょうか?

・セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(洗濯物折り畳みロボット)
・カラフル・ボード(感性を個別に解析するパーソナルAI)
・THEO:お金のデザイン(ロボアドバイザー資産運用)
・Empath:スマートメディカル(音声による気分解析技術)
・ユニロボット(次世代型ソーシャルロボット)
・FOLIO(テーマを選んで投資ができるオンライン証券)
・ディライテッド(オフィス受付システム)
・エイシング(機械制御向けAI)
・メビオール(安全で高栄養価の農産物を生産するフィルム)
・リアルワールドゲームス(位置情報ゲームプラットフォーム)

各社毎に行う、30秒の紹介ビデオ、3分30秒の英語でのプレゼン、1分30秒の質疑応答で全てが決まります。7倍超の倍率の中から選ばれただけあって、どのスタートアップも大変レベルの高い決勝戦となりました。その審査を行ったのは、私以外に以下の7名です。

・一橋大学イノベーション研究センター 特任教授 米倉誠一郎 氏
・株式会社セガゲームス 代表取締役社長 COO 松原健二 氏
・経済産業省 新規事業調整官 石井芳明 氏
・株式会社gumi 代表取締役社長 國光宏尚 氏
・株式会社サムライインキュベート 代表取締役 榊原健太郎 氏
・デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社 事業統括本部長 斎藤祐馬 氏
・Plug and Play Japan Managing Partner – Phillip Seiji Vincent 氏

審査は、審査員による下記の7つの評価軸とTwitterによる人気投票を加味して行われます。

<7つの評価軸>
・事業を始めた経緯・問題意識
・市場規模・ニーズ
・トラクション(ユーザー数や売上の伸び)
・競合優位性
・ビジネスプラン(拡大可能性や収益性が明確か)
・チーム構成やメンバーの経歴
・プレゼンテーションの説得力

各審査員が7つの評価軸に対して持ち点10点、合計70点で評価。集計の結果としては、上位3社がかなりの接戦となりました。そこで、最終的な審査員の協議も侃々諤々。日本代表を決めるのに審査時間ギリギリまでかかりました。

そうして決まった日本代表の発表の前に、スペシャルスポンサーのCAC特別賞が発表されました。CAC特別賞は投資資金として5,000万円の副賞が付く賞で、世界大会には行かないものの、大変価値の高い賞です。

CAC特別賞は…

メビオール株式会社!

以前に研究していた透析膜を応用して、あらゆる場所で安全で高栄養価の農産物の生産を可能にするフィルムを開発・製造する会社です。プレゼンでは実物も披露されました。

会場は興奮冷めやらぬ中、いよいよ日本代表の発表です。

日本代表は…

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社!

世界的にもユニークな洗濯物折り畳みロボット「ランドロイド(/ laundroid)」を開発する会社です。来年5月11日のサンフランシスコで世界決勝大会に臨みます。

前回のStartup World Cupでは、日本のユニファ株式会社がワールドチャンピオンとなりました。今回、優勝したセブンドリームには、ビジネスもプレゼンももっと磨いて、2連覇を目指して欲しいと思います。

こうやって、日本のスタートアップが世界レベルの活躍をし、プレゼンスを示すことで、日本のスタートアップがもっともっと増えて、世界に羽ばたくスタートアップが次々と出てくることを願ってやみません。

 

英国メイ首相来日イベントで登壇

大変光栄なことでした。

去る8月31日に、英国のメイ首相の来日に合わせて都内某所で開催された「Japan UK Business Forum」という200名以上の日英経済関係で活躍されている方々が参加するカンファレンスのパネルディスカッションに登壇しました。(英国当局からの要請で、これまで公開することができませんでした。)

このパネルディスカッションは、安倍首相のスピーチ、メイ首相のスピーチ、両国政府機関の調印の後に、「Innovation through Partnership」というテーマで行われました。もちろん全編英語です。

■登壇者(写真左より)
モデレーター:駐日英国大使館 原子力担当一等書記官 化学博士 Dr. Keith Franklin
日:インフォテリア株式会社 代表取締役社長/CEO 平野 洋一郎 (Pina Hirano)
英:Cavendish Nuclear社 チーフ・エグゼクティブ Mr. Simon Bowen
日:丸紅株式会社 電力・プラントグループCEO 柿木 真澄 氏 (Masumi Kakinoki)
英:Cambridge Consultants社 戦略的イノベーション 責任者 Mr. Arend Jan Van Bochoven

まずは、各メンバーの英国との関わりに関する自己紹介から。私は、これからビジネスソフトウェアでもデザインが重要になると考え「デザインファースト」のソフトウェアを開発する戦略を持っており、以前からデザインに長けたパートナーを世界中で探していたこと。最終的に、4月に買収したThis Place社にたどり着いたことを話しました。また、国を跨がった連携は大企業のものだけではなく、インフォテリアのような小規模の会社でも重要な意味を持つと強調しました。

そして、なぜ英国企業をパートナーに選んだのかと質問されました。私は以下のような主旨の話をしました。

「正直に言うと、最初は英国は眼中になく、主に米国の会社を探していました。しかし、約3年前に英国大使館の紹介で、実際にロンドンとマンチェスターに行って10社以上のスタートアップに会う機会を得ました。そこで感じたのは、英国にもこんなにイノベーティブでクリエイティブなスタートアップがあるのか!ということでした。日本で「イノベーション」というと誰もがシリコンバレーと言いますが、ロンドンもヨーロッパ各国からスタートアップが集まり活気に満ちていました。私たちはデジタルデザインのThis Placeと仕事を始め、その結果としてアウトプットも素晴らしく、企業カルチャーも相性が良かったことから、買収にいたりました。」

会場からの質問で、話題はどうやったら日英企業間でパートナーシップを成功させられるかという話に移ります。

英国と日本は、島国であることや、文化や、環境などが似ていてること、両国の関係の歴史も長いことなどから相互理解しやすく、またそれぞれの国で暮らすなどのことで、さらに良い協業が築けるだろうなどの意見がパネラーから出されました。

それに対して私は、「類似点の議論がありましたが、イノベーションという観点からは、『違う』ことがある点が重要です。同じ環境、同じ考えをもったモノリシックな集団からはイノベーションは起こりにくいでしょう。イノベーションとは『新しい組み合わせ』(注:Joseph Shumpeter)から起こることが少なくありません。異なる考え、異なる地域の人々が協業し刺激しあうことで、イノベーションに寄与するでしょう。」という主旨の意見を述べました。

会場からの次の質問は、「イノベーションを生み出すには、どのようなマネジメントプロセスが必要か?」とういうものでした。

パネラーの一人からは、イノベーションを生み出すためのマネジメントプロセスの考え方についての意見がありましたが、私は「イノベーションは、マネジメントプロセスからは生まれない」と応えました。その理由として、「イノベーションの生まれるのは、マネジメントが必要な前段階のアイディアだったり、『思い』だったりする。そのアイディアが具体化する段階でマネジメントプロセスを考えるのが順番」という意見を述べました。

また、「いまはビザ取得などの問題もあるが、日英間の交流をさらに進めるにはどうしたらよいと思うか?」という質問が出ました。

私は、「ソフトウェア業界においては、交流の前に日英お互いのプレゼンスが低すぎます。ソフトウェア業界ではシリコンバレーばかり見ていて、シリコンバレーに行く人も多いけれども英国のことを気にしている人は少ないのが実状です。だから、まずはお互いプレゼンスを上げないと交流しようという意識にも繋がらない」との話をしました。

このように、会場からの質問も受けながら、予定された45分はあっと言う間に過ぎていきました。

嬉しかったことは、パネルディスカッションが終わった後には日英で活躍されている10人以上の方から名刺交換を求められ、私の拙い英語でも伝わることがあったのだろうと感じたことでした。逆に残念だったことは、私以外の日本からのパネラーの方は、あらかじめ与えられていたテーマに関してはしっかりお話しされていたのに、会場からの質問には一切応えられなかったことです。せっかくの「ディスカッション」なので、用意した意見を披瀝するだけでなくインタラクションが重要だと思います。

実は今、英国に来ています。半年ぶりにこの地を訪れ、This Placeメンバーの熱気、街の活気、学生の元気に触れています。改めてパネルを振り返り、強調したいことが2つあります。それは、(1)国を跨がった協業は決して大企業だけのものではないこと、(2)これからの英国は要注目であることです。

これからさらにクラウド化が進み、非中央集権化が進み、「個」の時代になっていくあたって、小さな専門性の高いチームこそが様々な枠を超えて繋がる価値を生み出していくでしょう。そして、大企業を超えたスピードと価値を生み出していくことができると確信しています。

また、EU離脱をし独自路線を進むことができるようになる英国はより力を付けていくでしょう。既に、2017年上半期では、輸出金額は前年同期比で10%も増加、観光客(インバウンド)も前年に比べて6%増加、ロンドン金融街の雇用は13%も増加というレポートが出ています。英国全体の失業率は統計を始めて以来過去最低となっています。メディアの報道だけで、英国の行く先を心配する前に、自分の足で英国を見て感じてください。英国には、ケンブリッジ大学やオックスフォード大学をはじめ世界有数の教育レベルを誇り世界中から若者が集まっています。英国には、新たなイノベーションを生み出す若い力と活力が溢れていると感じるのです。