日別アーカイブ: 2014年4月3日

成長をもたらす3つの「し」とは?

4月、桜咲く日本では、大きな節目の時期です。
入社、異動、昇進などなど多くの変化が集中します。

そして、多くの人が新たな成長を意識し目指す時期でもあります。

人の成長を考えるとき、私は3つの段階の「し」が重要だと考えています。

まず、多くの組織でも実施されている第1の「し」は、「指導」です。

「指導」は成長の第1段階としては最も有効です。経験も浅く、独り立ちできない見習いのうちは、上長や先輩の「指導」が一番の成長の要因となります。「指導」により、先達の知見、技術、ノウハウを身につけて「一人前」を目指す段階です。この段階は、多くの管理者や組織が備えています。しかし、「指導」だけでは、他の人と同じ事ができるようになるまでの成長しかありません。

さらなる成長のための、第2の「し」は、「刺激」です。

ある程度仕事ができるようになると、仕事をこなすようになり、成長の度合いが鈍ってきます。一定の成果が出るようになるため、本人も上長・先輩側も満足し成長への意識が弛みがちになります。心にゆとりとさぼりが芽生えます。こういう時に、新たな段階の成長要因になるのが「刺激」なのです。

これまでと違う知見、これまでと違う視点、これまでと違う価値観、こういったものに触れ、驚き、自分が満足していたことに、危機感と恥ずかしさを感じるような「刺激」こそが成長要因となるのです。「刺激」は、人と違う自分なりのオリジナリティを持ったプロフェッショナルとしての成長をもたらします。

そして、第3の「し」は、「試練」です。

単なるプロフェッショナルを超えた、さらなる卓越した存在への成長をもたらすのが「試練」です。いままでの知見、経験、ノウハウでは到底破れない壁。これまでの蓄積を失いかねないような大きなリスク。こういった自らの価値や存在が危ぶまれるような「試練」に直面すると、人は全身全霊でその解決に取り組みます。すでにある程度のポジションに居る人も、怖くなるような「試練」。これが、人が唯一無二の価値ある存在に成長する糧となるのです。

翻って、部下や後輩を持つ「師」もこの3つの「し」を心したいものです。

いつまでも見習い扱いで「指導」ばかりしていては、逆に成長を阻害していることに気がつかなくてはなりません。能力もあるし成績も良いのになかなか成長しない部下がいたら、必要なのは「指導」ではなく、「刺激」の段階に来ています。そしてその先、「試練」を乗り越えることで「師」を超える成長がもたらされます。

しかし、自らが優秀なプレーヤーである「師」ほど、「指導」に固執し、「刺激」や「試練」を与えられません。なぜなら、そういう「師」ほど経験も深く、能力も豊かであるために、「指導」できることが多いからです。その結果、行動も価値観も同じような従順な人間が増えてしまいます。時代も環境も変わって行くのに「師」の時代の行動が基本になってしまう人ばかりになります。

本当の成長に導く「師」は、いつまでも、あれやこれや「指導」するのではなく、意識して「指導」から、直接細かな口出しをしない「刺激」の段階に導き、そして自らも手の届かない「試練」へと旅立たせるのです。この春、「指導についてこない」、「指導の成果が出ない」と嘆いている「師」がいたら、それは「師」の側の成長も必要だということにほかならないのです。