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MIJSコンソーシアムの理事長に就任

MIJSコンソーシアムという団体があります。MIJSとは、Made In Japan Softwareの略。つまり、日本で創られるソフトウェアのことです。MIJSコンソーシアムの理事長に、この4月から就任しました。

MIJSコンソーシアムは、「日本で創られるソフトウェアを世界に提供していこう」、「世界で通用する力を個々の開発企業がつけていこう」という同じ志を持ったソフトウェア開発会社の集まりです。私自身、コンピュータのソフトウェア開発を生業にして30年。そのうち10年強は世界市場でソフトウェアを提供している外資系の会社に在籍し、世界規模で役立ち、世界規模で提供されるソフトウェアがどのように開発されマーケティングされるのかを見て来ました。そして、

私は確信しています。
日本からも世界に役立つソフトウェアを輩出することができると。

その確信を基に、私はインフォテリアを創業し世界を目指し続けています。しかし、日本のソフトウェア開発会社にまだ足りないところが多々あることも事実です。

例えば…
・受託開発中心の企業が多く世界的なスケーラビリティに乏しい
・製品仕様は国内環境しか考えられていない
・マーケティングが営業の一部としか位置づけられていない
・資本と組む、時間を買うといった経営感覚に乏しい
などなど、世界市場で先行する欧米企業と戦っていくためには私たちが力をつける必要があることが数多くあります。

これらのことを個々の企業で学び、じっくりと成長していくこともできます。しかし、欧米企業に規模でもスピードでも大きな差を付けられている現在、悠長なことは言ってられません。いかに時間を短縮してキャッチアップし、そして戦いで勝ち始めるか。その手法の一つがMIJSの活動です。

私は確信しています。
ソフトウェアこそ資源も国土も無い日本に最適な産業の一つであると。

だからこそ、世界を目指す企業それぞれの知見や経験を共有し、学びと実施の速度を上げ、世界に通用する産業にしたいのです。そのためには、まずソフトウェアの「野茂英雄」(日本人初のメジャーリーガー)を輩出し、そして多くの企業がメジャーリーガーとなっていく。MIJSが目指すのは、決して多くの業界団体にあるような「護送船団」ではなく、個々プレーヤーつまり個々の企業の戦う力をつけることです。

現在、MIJSは70社を超えるソフトウェアプロダクトベンダーの集まりとなっています。私自身は、その全体を率いるには力不足ではありますが、副理事長にエイジアの美濃社長とNTTデータイントラマートの中山社長に就任していただき、またコンソーシアム活動の中心となる4つの委員会の委員長には、サイボウズの青野社長をはじめ経験豊かな4名の方に就任していただいたことで、さらにパワーアップした活動が展開されようとしています。

私は確信しています。
MIJSから、ソフトウェアの野茂英雄を輩出する事ができると。

・業界の寄り合いではなく、成果を出すコンソーシアム。
・社長自らが参加し、経営レベルでコミットするコンソーシアム。
・濃く!熱く!楽しい!コンソーシアム。

それが、MIJSです。

いずれ、多くのソフトウェア開発企業が世界で活躍し始め、MIJSというコンソーシアムそのものが必要無くなる日を目指して、理事長を務めさせていただきます。

私は確信しています。
いつの日か日本がソフトウェアを輸出産業に出来ることを。

成長をもたらす3つの「し」とは?

4月、桜咲く日本では、大きな節目の時期です。
入社、異動、昇進などなど多くの変化が集中します。

そして、多くの人が新たな成長を意識し目指す時期でもあります。

人の成長を考えるとき、私は3つの段階の「し」が重要だと考えています。

まず、多くの組織でも実施されている第1の「し」は、「指導」です。

「指導」は成長の第1段階としては最も有効です。経験も浅く、独り立ちできない見習いのうちは、上長や先輩の「指導」が一番の成長の要因となります。「指導」により、先達の知見、技術、ノウハウを身につけて「一人前」を目指す段階です。この段階は、多くの管理者や組織が備えています。しかし、「指導」だけでは、他の人と同じ事ができるようになるまでの成長しかありません。

さらなる成長のための、第2の「し」は、「刺激」です。

ある程度仕事ができるようになると、仕事をこなすようになり、成長の度合いが鈍ってきます。一定の成果が出るようになるため、本人も上長・先輩側も満足し成長への意識が弛みがちになります。心にゆとりとさぼりが芽生えます。こういう時に、新たな段階の成長要因になるのが「刺激」なのです。

これまでと違う知見、これまでと違う視点、これまでと違う価値観、こういったものに触れ、驚き、自分が満足していたことに、危機感と恥ずかしさを感じるような「刺激」こそが成長要因となるのです。「刺激」は、人と違う自分なりのオリジナリティを持ったプロフェッショナルとしての成長をもたらします。

そして、第3の「し」は、「試練」です。

単なるプロフェッショナルを超えた、さらなる卓越した存在への成長をもたらすのが「試練」です。いままでの知見、経験、ノウハウでは到底破れない壁。これまでの蓄積を失いかねないような大きなリスク。こういった自らの価値や存在が危ぶまれるような「試練」に直面すると、人は全身全霊でその解決に取り組みます。すでにある程度のポジションに居る人も、怖くなるような「試練」。これが、人が唯一無二の価値ある存在に成長する糧となるのです。

翻って、部下や後輩を持つ「師」もこの3つの「し」を心したいものです。

いつまでも見習い扱いで「指導」ばかりしていては、逆に成長を阻害していることに気がつかなくてはなりません。能力もあるし成績も良いのになかなか成長しない部下がいたら、必要なのは「指導」ではなく、「刺激」の段階に来ています。そしてその先、「試練」を乗り越えることで「師」を超える成長がもたらされます。

しかし、自らが優秀なプレーヤーである「師」ほど、「指導」に固執し、「刺激」や「試練」を与えられません。なぜなら、そういう「師」ほど経験も深く、能力も豊かであるために、「指導」できることが多いからです。その結果、行動も価値観も同じような従順な人間が増えてしまいます。時代も環境も変わって行くのに「師」の時代の行動が基本になってしまう人ばかりになります。

本当の成長に導く「師」は、いつまでも、あれやこれや「指導」するのではなく、意識して「指導」から、直接細かな口出しをしない「刺激」の段階に導き、そして自らも手の届かない「試練」へと旅立たせるのです。この春、「指導についてこない」、「指導の成果が出ない」と嘆いている「師」がいたら、それは「師」の側の成長も必要だということにほかならないのです。