『Linux著作権問題から目をそむけるべきではない』
こんにちは、インフォテリアの平野です。
いつもなら「XMLよもやま話」のコーナーですが、最近気になることがあり、今日はXMLと直接関係のないことを「オピニオン」として書かせていただきます。しかし、直接は関係ないとはいえ、XMLは数多くのオープンコミュニティとの関係も深く、実際に他人事ではない人も多いと思います。それは、SCOのLinux著作権問題。
ITに携わる人なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。簡単にいえば、Linuxに米SCO社が著作権をもつUnix(System V)のソースコードが盗用されているということを同社が主張している問題です。SCOの発表によれば、セキュリティや分散処理などの部分にソースコードの盗用が見つかり、バグやソースのコメント文などまで同じだといいます。
Linuxの根幹を揺るがしかねない「事件」だけに、業界では大きな話題となりました。しかし、私が気になるのは、Linuxを活用するベンダー、コミュニティ、ユーザーの反応が極めて冷ややかだということです。例えば、日経マーケットアクセスの調査(2003年7?8月)での、「UNIX知的財産権問題で米SCOの主張を認めた企業はわずか1.6%」という報道がありました。業界内でもこの報道を取り上げてSCOの主張は不当だとする意見をよく聞きます。Linux関係者からは、「SCOは利己主義だ」とか「Linuxの普及を妨害するのか?」と言った話も聞かれ、SCOがLinuxの成長を阻む悪者扱いだったり、できれば無視したいという風潮があったりしますが、本当にこういう対応でいいのでしょうか?
実は、私がこの問題に神経質になるのは、過去に自分のソフトウェアを盗用されたことがあることが関係しています。20年ほど遡る話になりますが、ある日本語ワープロの辞書を競合メーカに盗用されました。盗用の決定的証拠は、今回の問題に似ており、バグ(間違い)と辞書データに不要に入っている文字でした。そのメーカに、盗用を問いただしたところ、「証拠」を見せろと言うことだったので、リストを提出しました。そうしたら、なんの連絡もなく半月後には指摘された箇所を修正したバージョンが出荷されていたのです。しかも、その後、そのメーカの社長のコメントは「うちの開発陣を信じている」というもの。信じられませんでした。このときは、実は全ての問題点を開示していなかったことが幸いし、その後も盗用を追及し、最後には認めさせることができたのです。
Linuxはオープンコミュニティの多くの開発者が関わっているためにさらに原因解明も責任問題も複雑です。そのため、Linuxコミュニティでは、証拠を全て開示しろという話も出ていますが、既に開示された部分ではSGIが問題を認めてソースコードを改修するなどの動きがでており、完全潔白でないことは既に明らかです。また、白黒をつけるためには全ての証拠を開示することを躊躇するのは私の経験からすると至極当然のことと思います。関係者はこの問題に真剣に取り組むべきですし、ユーザーも、問題解決に向けての機運を作ることはできるでしょう。
Linuxは、フリーソフトウェアということから、著作権の問題も軽視されがちな傾向を感じています。しかし、「ソフトウェアがフリー(無償)であること」と「著作権」は、独立していることであって、フリーソフトウェアであっても著作権やそのライセンスについては、商用ソフトと同様に敏感でなくてはなりません。
Linuxには世界中から大きな期待がかかっています。これからもLinuxを健全に成長させていくためには、この問題を過小評価すべきではありません。問題から逃避するのではなく正面から取り組んで、解決し、今後はこのようなことの起こらないような開発のしくみを作るべきだと考えます。そして、この問題をきちんと解決することができれば、Linuxだけでなく、オープンソースのソフトウェア開発手法にとっても大きなステップとなることと確信しています。
補足:
この記事に関して後日、「インフォテリアは、SCOにライセンス料を払うつもりなのか?」というご質問をいただきました。私の意見は、Linux利用者はSCOにライセンス料を払うべきということではなく、タイトルにも示したとおり、この問題を、斜視、無視すべきではない、ということです。現在のライセンス料問題に関する責任の範囲は、SCOと契約をしているライセンシーの範囲を超えないと考えています。もし、SCOのライセンシーで契約に違反した企業があれば、その企業は責任を取るべきだと考えています。
日時: 2003年10月30日 00:00 | | TrackBack
