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第5回 マスターハブに求められるもう1つの役割


さあ、中級編の最終回です。前回に引き続いてマスターハブについての説明ですが、今回は一歩踏み込んで、「実際にマスターハブを運用する」ことをイメージしながら、マスターハブの役割を考えたいと思います。

統合マスターとマスターハブを組み合わせて仮想的にマスター統合を実現する際、マスターデータはマスターハブを通じてさまざまな業務システムに反映されます。理想的なマスターデータ管理(MDM)環境を示すなら、図1のようになるでしょう。つまり、統合マスターから各業務システムへ1:Nでマスターデータが配信される環境です。

図1
統合マスターから各業務システムへ1:Nでマスターデータが配信される環境

ここで是非とも意識してほしいことがあります。それは「マスターハブの機能は、マスターデータの配信だけで十分だろうか?」という点です。こうした疑問を示したことからも明らかなように、結論だけを言えば、「不十分」です。

では、マスターデータを配信するほかに、マスターハブにはどのような機能が必要なのか。その答えを明白にするために、マスター統合プロジェクトを推進する際によくある社内IT環境の変遷を見ていきましょう。

一般にマスター統合プロジェクトは、一気に統合マスターを構築する「ビッグバン方式」で進めるものという印象が強いかもしれません。ビジネス環境の変化が少ないうえ、いくつかのシステムを密結合させるのが主流だった時代、一種の“正攻法”だったやり方です。ところが、最近はビックバン方式ではなく、段階的にマスター統合を進める方式を採用する企業が増えています。

ビジネスとシステムの環境変化を見据えたマスターデータ管理(前編) >>
「疎結合」のマスターデータ管理に挑む(後編) >>
ASTERIA MDM One導入企業[味の素ゼネラルフーヅ様]インタビュー

最も大きな理由はコストです。元々、ビッグバン方式でマスター統合をやり遂げるには、どうしても多額の期間と工数が必要になります。そこへきて、昨今の不況です。エンドユーザー(特に経営層)はIT投資に対して非常に慎重になっており、ROIなど効果の算出が簡単ではないマスター統合プロジェクトに積極的に投資するというのは現実的には難しい。

そうかといって、ビジネス環境の変化が激しい今、マスター統合を放置しておくことはできません。そこで浮上してきたのがボトムアップで段階的にプロジェクトを進める方式です。

ボトムアップによるマスター統合プロジェクトでは、既存システムに対してどのようなアプローチをとるかが重要になってきます。一般に考えられるアプローチは次の3つ。

1)既存の運用を優先する
2)既存の運用を優先しデータクレンジングのみ行う
3)運用フロー含めて見直しを行う

それぞれ一長一短がありますが、「トラブルなく運用されている既存システムについてはなるべく手を入れたくない」という観点に立てば、ここで選択される現実的な対応は1)もしくは2)でしょう。

もっとも、1)や2)のアプローチを採択したからといって、既存システムはまったく手付かずで大丈夫というわけにはいきません。既存システムに対しては、マスターデータの配信こそ必要ないかもしれませんが、既存システムと新規システムとの間でデータの整合性を取るためにマスターデータを集める必要があるからです。そのことは、統合マスターから複数の業務システムへ、1:Nでマスターデータを配信する仕組みの整備手順を考えると分かります。

【フェーズ1】 既存システムのマスターデータを統合マスターに集める
【フェーズ2】 システムリプレースのタイミングで新システムを統合マスターの管理下に配置する
【フェーズ3】 統合マスターで管理するマスターデータを新システムに配信する

【フェーズ1】
【フェーズ1】
既存システムのマスターデータを統合マスターに集める

【フェーズ2】
【フェーズ2】
システムリプレースのタイミングで新システムを統合マスターの管理下に配置する

【フェーズ3】
【フェーズ3】
統合マスターで管理するマスターデータを新システムに配信する

いかがでしょう。「マスターハブの機能は、マスターデータの配信だけで十分だろうか?」の答えを「不十分」とした理由がお分かりいただけましたか。マスターハブは、1:Nでマスターデータを配信するという最終目的に合った機能だけでなく、マスター統合プロジェクトを円滑に推進する上で欠かせない役割、すなわち集信するための機能まで必要になるのです。

これまで全5回にわたってMDMコラム中級編として、「統合マスター」「マスターハブ」について詳細な解説を行ってきました。皆さんが今後、マスター統合(MDM)プロジェクトに取り組む上での一助になれば幸いです。

[執筆 : インフォテリア株式会社 エンタープライズ事業部 企画部 製品担当]


【MDMコラム上級編】

  第1回:第5の業務になるマスターデータマネージメント(MDM)

  第2回:MDMがインフラであることを正しく理解する

  NEW  第3回:MDMという業務を運用していくのに不可欠な視点


【MDMコラム中級編】

  第1回:統合マスターの実態に迫る①大きく2つの用法を整理しよう

  第2回:統合マスターの実態に迫る②統合マスターで管理するデータ

  第3回:統合マスターの実態に迫る③統合マスターをどう管理すべきか

  第4回:マスターハブの基本概念と、重要な2つの役割

  第5回:マスターハブに求められるもう1つの役割


【MDMコラム入門編】

  第1回:マスターデータとは、いったい何か

  第2回:分散化がもたらしたマスターデータの現状

  第3回:マスターデータも品質管理が重要

  第4回:Master Data Management(MDM)とは

  第5回:世界と日本のMDM市場