前回に引き続き、統合マスターの実態を整理していきましょう。今回は、以下にあげた3つの視点のうちの2番目です。
① 統合マスターの用途
② 統合マスターで何を管理するのか
③ 統合マスターをどう管理するのか
| 統合マスターで何を管理するのか |
すでにご存知のように、社内には多くの種類のマスターデータが存在しています。その種類をザッとリストアップしただけでも次のようなものが考えられます。
ア) 従業員系
イ) 製(商)品系
ウ) 顧客系
エ) 会計系
オ) ロケーション系
これらのマスターデータのうち、統合マスターで管理すべきものはどれでしょうか。
「統合マスターと呼ぶからには、すべてを管理するのが当然ではないか」。もちろん、すべてのマスターデータを一元管理するのは理想に違いありませんから、これが模範解答かもしれません。ところが、情報システムの運用の実態を考慮した場合、すべてのマスターデータを統合マスターで管理することが必ずしも現実的な選択肢であるとは限らないことも事実です。
会計系のマスターデータを考えてみてください。科目など経営実績の情報を詳細に示す会計系のマスターデータは重要ですね。しかし、会計系のマスターデータは主に財務管理系のシステムにおいて使われるケースがほとんどです。製(商)品系のマスターデータのように社内にある複数のシステムで共有しなければならないケースはそれほど多くなく、統合マスターで管理するのはあまり一般的ではありません。
統合マスターで何を管理するのかを考える際、目的や効果を改めて見極めるために、いったん原点に立ち返ることが肝心です。さもなければ、マスター統合の議論に傾注するあまり、いつの間にか当初の目的がなおざりになってしまう。つまり、効果をそっちのけで、統合マスターを整備すること自体が目的にすり替わってしまいます。
忘れてならないのは、何らかの経営課題あるいは業務上の課題などを解決する手段として、マスターデータ管理(MDM)を徹底するということ。少し踏み込んで言うと、「経営」「業務」「システム」「データ」の4つの視点で課題を捉え(詳細は本コラムの第1シリーズである[入門編]の第4回を参照)、それを解決するのに最適なマスターを優先して統合マスターで管理するのです。
小売業の例を考えてみましょう。
最近は商品のライフサイクルの短期化が進行して、メーカー各社から頻繁に新商品が発売されるようになりました。そのため小売業では、商品の情報をシステムに登録・反映する機会が、以前と比べ物にならないほど増えています。このことは結果的に、品揃えの充実を図って競争力を高めようとする小売業にとって、管理コストを押し上げる大きな要因になっているのです。
「10人を超える従業員が業務時間中にひたすら商品のデータをシステムに入力している」。こうした話を耳にした方もいるでしょう。これは単なる噂なんかではなく、現実に小売業の現場で起きている事実です。
登録・反映すべきデータの量が多いことが手間を増やす原因の1つになっています。ただ、それ以上にやっかいなのは、同じ内容のデータを何度もシステムに入力しなければならないシステムの環境です。
社内には、仕入れや在庫の管理、販売の管理など商品の情報を取り扱うシステムが複数存在します。一連の業務を滞りなく遂行するには、1つひとつのシステムが同じ内容のマスターデータを使う必要があることは言うまでもありません。このように複数のシステムのマスターデータの「質」を均一に保つために、多くの人手がかかっているわけです。
こうしたケースでは、マスターハブ型の統合マスターを構築することによって業務の効率を大幅に改善できる可能性があります。商品系のマスターデータを統合マスターで管理して、取り扱う商品を追加・変更する際は統合マスター経由で複数の社内システムに情報を反映する。そうすることで、マスターデータの入力に要している莫大な人手とコストを抑えられるのです。
成長が著しい企業でよくみられるのですが、事業拡大のスピードにシステムの整備が追いついていないことが原因で、取引先の実態を正確に把握できていない場合もあります。サービスを展開するたびにシステムを用意してきたために取引先の情報がサービスごと、すなわちシステムごとにバラバラに管理されているケースです。そのままでは遅かれ早かれ、商圏の拡大や提案型営業の強化など事業展開を図っていこうにも適切な戦略を練ることが難しくなるでしょう。
このケースでは、取引先系(顧客系)のマスターデータを用いて解析形の統合マスターを構築するのが有効です。解析型の統合マスターと分析システムなどを連携させて各種サービスの状況を分析するといった、事業展開時の意思決定支援に用いることができます。
さて、いかがでしょう。統合マスターというと「社内のすべてのマスターデータを管理する必要がある」という印象を受けがちですが、実際には目的や解決したい課題などによって統合マスターで管理すべきマスターデータの種類も違えば、優先度も自ずと変わってくる。場合によっては、統合マスターを用いなくても効果的に管理できる種類のマスターデータもあるという点を理解いただけたでしょうか。効果を引き出すためにキーとなるマスターデータを見定めて、統合マスターで管理していく。これが統合マスターの構築・運用の定石と言っても過言ではありません。
次回は3つの切り口の最後である「統合マスターをどう管理するのか」について解説いたします。どうぞお楽しみに。
[執筆 : インフォテリア株式会社 エンタープライズ事業部 企画部 製品担当]
【MDMコラム上級編】
第1回:第5の業務になるマスターデータマネージメント(MDM)
NEW 第3回:MDMという業務を運用していくのに不可欠な視点
【MDMコラム中級編】
第1回:統合マスターの実態に迫る①大きく2つの用法を整理しよう
第2回:統合マスターの実態に迫る②統合マスターで管理するデータ
第3回:統合マスターの実態に迫る③統合マスターをどう管理すべきか
【MDMコラム入門編】








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